2003 Fiscal Year Annual Research Report
気候温暖化による中部日本・亜高山域の積雪量の減少が森林生態系に与える影響
Project/Area Number |
15310027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
丸田 恵美子 東邦大学, 理学部, 助教授 (90229609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 剛 森林総合研究所, 東北支所, 主任研究官 (40353742)
上田 正文 奈良県森林技術センター, 主任研究員
山崎 淳也 日本学術振興会, 特別研究員
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Keywords | 森林限界 / 高山帯 / 亜高山帯 / Pinus pumila / 乗鞍岳 / 水分収支 / 強光阻害 / 水分ストレス |
Research Abstract |
本研究は冬季の積雪量に傾度をもつ中部山岳域の森林生態系に対して、気候温暖化による冬季の積雪量・積雪期間の減少が、どのような影響を与えるかを予測する知見を得ることを目的としている。初年度である本年度は、北アルプス南端に位置する冬季の積雪量が比較的多い乗鞍岳において、高山帯に優占するハイマツ群落の形成メカニズムを環境との関連で、まず明らかするための研究を行った。 高山帯のハイマツ群落は、その形成機構からみて3種類に分けることができた。まず、(1)標高2700〜3000mの稜線の常に強風に曝されている場所で、群落高が20cm以下のもの、次に(2)風衝地ではあるが、幾分風当たりは弱く群落高は20〜50cmのもの、そして(3)直接の強風に曝されることはなく、冬季には積雪が多く、雪に覆われて越冬する群落高100〜120cmのものである。(1)は冬季もほとんど積雪に覆われることがなく、葉のクチクラや枝の樹皮は雪氷片によって擦られて水分を消失しやすく、冬季に乾燥が著しく進む。そして5月に最も乾燥し、枝では水の通導阻害が起きていた。風上側の葉は褐変枯死したが、風下側の葉は正常であり、枝の通導阻害も6月には回復した。以前に行った研究での亜高山帯や森林限界の構成樹種であるAbies属のシラビソやオオシラビソが、春に生じた通導阻害は回復することなく、重症の場合は枝全体が枯死する場合があることと対照的である。ハイマツの、このような乾燥に対する強い抵抗性が、高山の稜線にまで分布を可能にしているということができる。一方、(2)(3)では、冬季も積雪の保護を受けており、春にも著しい水分ストレスは生じることはなく、雪融け後には、速やかに吸水を開始した。
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[Publications] J.Yamazaki, A.Ohashi, Y.Hashimoto, E.Negishi, S.Kumagai, T.Kubo, T.Oikawa, E.Maruta, Y.Kamimura: "Effects of high light and low temperature during harsh winter on needle photodamage of Abies mariesii growing at the forest limit on Mt.Norikura in Central Japan"Plant Science. 165. 257-264 (2003)