2004 Fiscal Year Annual Research Report
組換え修復遺伝子のヒト細胞における機能解析による放射線感受性予測
Project/Area Number |
15310039
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
宮川 清 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40200133)
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Keywords | 放射線感受性 / 相同組換え / ゲノム不安定 / DNA修復 / 乳がん / 染色体異常 |
Research Abstract |
放射線感受性を規定するDNA二重鎖切断修復遺伝子の多型の中で、有意にがん発症と関連性が分子疫学的に証明されているのは、XRCC3のT241Mである。この多型の生物学的意義を解明するために、まずXRCC3のヒト欠損細胞をノックアウトによって作製した後に、野生型Tとバリアント型Mを内因性レベルと同じ程度に外来性に発現することによって、これらの細胞間における表現型の比較を行った。その結果、DNA損傷作用に対する感受性や姉妹染色分体交換などの相同組換え修復に関する表現型には差異は観察されなかったが、染色体の倍加だけはバリアント型において有意に増加していた。一方、同様の染色体倍加はDNA複製因子RPAの過剰発現によっても誘発されるが、XRCC3の野生型の過剰発現によってRPAによる染色体倍加は抑制されたのに対して、バリアント型の過剰発現では抑制されなかった。このように、XRCC3の遺伝子多型はDNA修復よりもDNA複製制御に重要な役割を担っていることが示唆された。次に、相同組組換え修復がどのような分子機構でDNA再複製を制御するのかを検討した。チェックポイントがDNA再複製を制御している可能性を想定して、Cdkの阻害因子であるp21の機能変化を検討したところ、バリアント型ではp21とPCNAの相互作用が増強している結果が得られた。これらの結果より、DNA二重鎖切断修復は単にDNAに直接作用して修復を行うのみならず、細胞周期の調節機構を介してDNA複製をも制御していることが明らかになり、放射線感受性を規定する遺伝的背景の理解にもこのような広い視野からの解析が必要であることが示唆された。
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Research Products
(2 results)