2003 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による爪痕を契機とするゲノム不安定化機構の染色体移入法による解析
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15310040
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
児玉 靖司 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (00195744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 啓司 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00196809)
渡邉 正己 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20111768)
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Keywords | 放射線 / ゲノム不安定化 / 染色体移入 / テロメア不安定化 / 遅延性染色体異常 |
Research Abstract |
本研究では以下のような作業仮説を掲げて、その真偽を検証した。すなわち、"放射線被曝染色体には放射線による爪痕が刻印される。この爪痕は、被曝染色体のゲノム組換えポテンシャルを上昇させ、被曝染色体自身を不安定化させると伴に、非被曝染色体との相互作用も亢進させる。"これを検証するために、本研究では、ヒト4番、または11番染色体を1本含むマウス細胞にX線を照射した後に、被曝ヒト染色体をX線を被曝していない別のマウス細胞に移入し、ヒト染色体が移入された単一コロニー由来マウス細胞を単離した。それらのマウス細胞クローンに関して、被曝ヒト染色体に遅延性に生じる異常を蛍光プローブによる染色法(FISH法)により解析した。その結果、X線に被曝していないヒト染色体を移入したマウス細胞では、移入ヒト染色体が変異していた細胞の割合は7個のクローンを調べて、0〜7.5%であり、異常の種類も1〜2種類であった。これに対して、4〜15GyのX線を被曝したヒト染色体を移入したマウス細胞では、移入ヒト染色体が変異していた細胞の割合は8個のクローンのうち、2個で72%、及び85%と高く、しかも異常の種類はどちらも7種類と多いことが分かった。観察された染色体異常は、ヒト染色体自身の変異(cis-acting)だけでなく、X線に被曝していないマウス染色体との相互作用(trans-acting)により形成されたものも見られた。また、融合型染色体異常の染色体融合部について、テロメアシグナルの有無を解析した結果、テロメア配列を残したまま融合していることが明らかになった。本研究の結果は、被曝染色体がそれ自身で不安定な性質を持ち、他の非被曝染色体と相互作用すること、さらに、その際にテロメア不安定化が染色体異常形成の重要な鍵を握っていることを示唆している。すなわち、本研究の結果は作業仮説を支持するものであると言える。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] A.Urushibara et al.: "Involvement of telomere dysfunction in the induction of genomic instability by radiation in scid mouse cells"Biochem.Biophys.Res.Comm.. 313. 1034-1040 (2003)
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[Publications] B.Undarmaa et al.: "X-ray-induced telomeric instability in Atm-deficient mouse cells"Biochem.Biophys.Res.Comm.. 315. 51-58 (2004)
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[Publications] T.Tominaga et al.: "Involvement of reactive oxygen species (ROS) in the induction of genetic instability by radiation"J.Radiat.Res.. (印刷中). (2004)
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[Publications] M.Ojima et al.: "Delayed induction of telomere instability in normal human fibroblast cells by ionizing radiation"J.Radiat.Res.. (印刷中). (2004)