2004 Fiscal Year Annual Research Report
カキ殻付着生物を利用した、水質浄化と生物生産力を向上させる技術の開発に関する基礎
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15310067
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三島 康史 独立行政法人産業技術総合研究所, 循環バイオマス研究ラボ, 主任研究員 (90358086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 到保 独立行政法人産業技術総合研究所, 循環バイオマス研究ラボ, 主任研究員 (90358226)
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Keywords | カキ殻 / 付着生物 / 安定同位体比 / 広島湾 / 生態系 |
Research Abstract |
1.カキ殻表面に付着する微細藻類の生産および消費量の評価 溶在酸素濃度の変化からカキ殻表面に付着する微細藻類による正味の生産量を測定する装置「付着生物用生産、消費速度測定装置」を用いて、広島湾湾奥部に設置した実験用カキ筏の、カキ殻付着微細藻類による生産速度の周年変動を測定した。カキ殻1個当たりの総生産、総消費、純生産は、それぞれ、0〜13.4(平均4.0)mgC/day、7.6〜36.7(平均22.5)mgC/dayおよび-32.8〜-6.0(平均-18.5)mgC/dayであった。有機物総生産をカキ筏単位面積当たりに換算すると、1500mgC/m^2/dayとなり、瀬戸内海の平均基礎生産速度781mgC/m^2/dayの2倍にも相当することが判明した。また、純生産(有機物の分解速度)から見積もられた、海水からの懸濁態有機物除去速度は、カキ殻1個当たり10mgC/dayであり、カキ殻が海水中から多量の懸濁態有機物を吸着・除去している可能性が示された。 2.カキ殻付着生物群集をめぐる生態系構造の解明 広島湾湾奥部のカキ殻付着動物群集は、周年を通して、二枚貝、甲殻類、多毛類、ほや類等28〜48(平均40)種見られ、カキ1個体当りの個体数密度は82〜980(平均340)個体、生物量は2〜35(平均15.6)gであり、非常に多様な動物群集が周年を通して、高密度で生息していることが明らかとなった。これらの生物量を維持するためには、付着微細藻類による生産や、カキによる排せつ物による有機物供給量だけでは不足することからも、カキ殻が海水中から多量の懸濁態有機物を吸着・除去している可能性が示された。 以上の結果から、カキ殻付着微細藻類による有機物の生産は活発であるが、付着動物群集やバクテリア等による有機物の消費速度が非常に大きく、カキ殻が海水中から多量の懸濁態有機物を吸着・除去する機能を有していることが明らかとなった。カキ筏は、海水中から多量の懸濁態有機物を吸着・除去し、海水を浄化する機能と、カキ殻表面で高密度の付着微細藻類や付着動物群集を培養し、カキ筏周辺の魚類等に餌を供給する魚礁としての機能を有していることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)