2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15310069
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
生駒 忠昭 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (10212804)
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Keywords | 光誘起電子スピン分極 / 巨大磁気抵抗 / ラジカル対機構 / 励起三重項 / 擬一次元格子 / 分子性固体 / ポリビニルカルバゾール / 光キャリア生成 |
Research Abstract |
有機物質はナノ微細加工技術なくして分子レベルで起こっている量子効果をそのままマクロな物性に反映させることのできるポテンシャルを本質的に持っている。しかしながら、有機物の量子スピン選択的な電子移動反応を利用したナノ構造体の開発はほとんど行われていない。そこで、光導電性有機ナノ構造体を対象に光誘起電子スピン分極を利用した高い電気伝導性を実証することを目的とした研究を行った。得られた成果を以下にまとめた。 1)三重項増感剤として働く分子(アゾベンゼンやルミクロムなど)をドープした薄膜で、キャリア収率が磁場中で異常に大きくなる系を初めて見出した。巨大な磁場効果は、光励起で生成される励起三重項状態のスピン分極および電子正孔対のスピン緩和が重要な役割を果たしていることを明らかにした。 2)10Tまでの強磁場実験を行うことで、近接電子正孔対のスピン状態のレベル交差が原因の磁場効果を初めて観測した。これは、キャリア生成が擬一次元格子で段階的正孔移動をしていることを証明する決定的な結果となった。また、1T以上の領域ではレベル交差由来の磁場効果以外にも興味深い現象が検出され、光導電性研究における強磁場実験の有用性が示された。 3)世界最高の光伝導度を示すことで注目されているC_<60>をドープしたPVCz薄膜の詳細なスピンダイナミクスを初めて明らかにした。電荷移動錯体の電子励起で生成する電子正孔対は、C_<60>の局在励起一重項状態へ再結合し、局在励起三重項状態への再結合はほとんどないことが分かった。ただし、再結合で生成した励起一重項状態は励起三重項状態を経由して基底状態へ緩和する。 分子性導体における光磁気伝導効果の新しい側面が明らかにされ、磁性キャリア輸送研究にとって磁場効果実験が有用であることが示され導電性における光誘起電子スピン分極の重要性を示した。
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Research Products
(6 results)