2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール分子磁性体におけるメゾスコピック量子トンネル現象の研究
Project/Area Number |
15310073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前川 覚 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (40135489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山田 明 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (60211835)
宮下 精二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10143372)
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Keywords | ナノスケール / ナノサイズ / メゾスコピック / 分子磁性体 / 核磁気共鳴 / トンネル現象 / スピン / 量子 |
Research Abstract |
○300mK以下で磁化の量子トンネリングが起こる分子磁性体Fe8において分子スピン揺動の磁場方向依存性を調べるために単結晶Fe8の容易軸に垂直な方向に磁場をかけてNMR実験を行った。その結果、^1H核スピンの横緩和がGauss関数的であることを見いだした。これは核スピン間に電子スピンを介した異方的相互作用が働いていることを示唆している。 ○単結晶Fe8の容易軸に垂直に外部磁場をかけ、120mKにおいて^1H核スピン磁化を緩和させた後、磁場掃引を行い、NMRスペクトルの変化を調べた。その結果、2〜3Tの磁場を通過、または待機するとスペクトル強度が増大し、この磁場域で核スピン緩和率が増大していることが明らかになった。これはトンネリング周波数とラーモア周波数が一致することにより緩和への寄与が増大するためと考えられる。 ○海外共同研究者Keren教授とのスイスPaul Scherrer研究所でのFe8のミュオンスピン共鳴(μSR)共同実験の結果について議論を重ね、量子トンネリングが起こっていることを確認するとともに、多ビット磁気記憶素子としての可能性について指摘した。 ○量子トンネル現象が起こる可能性のある新しい分子磁性体としてフェリリング磁性体Mn6R6に着目し、この物質の合成を行った。この試料のX線解析による物質の同定、磁化と磁化率の測定を行い、ついで1.4Kの温度域までの^1H核スピン緩和率の温度、磁場依存性の測定を行い、スピンダイナミックスについての基礎的情報を得た。 ○反強磁性リング分子磁性体Fe10のNMRスペクトルと核スピン緩和率1/T_1、1/T_2の温度、磁場依存性について理論的解析を行い、内部相互作用や少数スピンリング磁性体におけるエネルギー準位とスピン緩和の関係、低エネルギーギャップについて明らかにした。
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Research Products
(6 results)