2004 Fiscal Year Annual Research Report
スピン偏極トンネル分光法によるナノ磁気構造と表面電子状態の探索
Project/Area Number |
15310075
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
川越 毅 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (20346224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
壬生 攻 京都大学, 低温物質科学研究センター, 教授 (40222327)
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Keywords | スピン偏極トンネル分光法 / スピン偏極表面準位 / 層状反強磁性 / らせん転位 / 反強磁性磁区 |
Research Abstract |
本研究を遂行するためのSTM観測・MBE法による試料作製・清浄表面評価が可能な超高真空装置の整備とその動作点検が昨年度までに終了し、本年度は1)スピン偏極トンネル分光法によるCr(001)薄膜の磁気像観察-構造欠陥と反強磁性磁区・磁壁構造のナノスケールでの観察 2)Cr(001)上のFe超薄膜の成長過程のLEED,Auger,STMによる評価について実験を行った。 その結果 1)Cr(001)薄膜表面が層状反強磁性を示すことを確認するばかりでなく、量子化軸が異なる反強磁性磁区の存在とらせん転位近傍での狭い磁壁(【approximately equal】6nm)の観察に成功した。それぞれの磁区の量子化軸がステップの方向と強い関連があること、らせん転位間の距離が磁壁幅の決定に大きな役割を担っていることが判った。特に現実の薄膜に存在するらせん転位やステップなどの微視的な欠陥とスピン状態との相関に関する知見を実空間で直接的に得ることができることを示した。 2)ではLEED観察の結果、Fe超薄膜はCr(001)上にエピタキシャル成長し、p(1×1)構造を示すことを確認した。Fe超薄膜のモフォロジーは成長条件に強く依存するが、成長条件を最適化することにより、原子レベルで平坦かつCrの表面偏析を抑えたFe超薄膜を形成することができることを見いだした。室温でFe 2ML蒸着後300℃アニール後のSTM観察の結果、原子レベルで平坦な表面が形成されていることを確認した。その微分コンダクタンススペクトルは下地のCr(001)とは明瞭に異なっており、Fe(001)清浄表面に特有なスピン偏極表面準位に対応する0.3V近傍のピークを明瞭に観察した。この結果は、Crの表面偏析を抑制したFe(001)清浄表面が得られたことを示唆する。
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Research Products
(2 results)