2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15310115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古田 一雄 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50199436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 忍 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (90201053)
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Keywords | 安全規制 / 技術基準 / 公認検査機関 / 公認検査員 / 品質保証 / 社会シミュレーション / マルチエージェントモデル / 規制スタイル |
Research Abstract |
昨年度に開発したモデルに基づき、安全規制に関する社会シミュレーションを実施するためのシステムを開発した。シミュレーションシステムは、各々の組織や事業者をエージェントとするマルチエージェントシステムでモデル化した。事業者モデルは複数の機器から構成される設備を用いて生産を行い、収益を上げる。各事業者は所有する設備に対して特定のメンテナンスポリシーを有しており、これに従って設備の保守を行いながら操業する。各機器のメンテナンスにはコストがかかるが、メンテナンスを怠って機器群が特定の組合せで故障すると事故が起り、多大の損害を蒙る。規制者の規制スタイルは環境として与える。規制スタイルとして事業者の使用設備機器やメンテナンス期間を細かく規定する仕様規定型と、設備信頼度だけで規定する性能規定型を比較し、規制スタイルが社会全体の安全・利益が最大になるような条件をつきとめるとともに、感度解析を行って公益を大きく損ねるような要因を明らかにした。 具体的には、シミュレーション実験の結果から次のような知見を得ることができた。事故に対する事後制裁は、必ずしも効率性向上の阻害になるとは限らず、場合によってはむしろその発展を手助けすることがわかった。さらに、仕様規定は意図と全く逆の結果を生む可能性があることが示された。そして、社会の安全性は現に採用されている規制スタイルに依存するため、例えば途中で規制を撤廃すると、信頼性はやがて規制がない場合と同じ水準に変化してしまうことが示された。また、安全規制は定期検査よりも抜き打ち検査で実施した方が効果的であることがわかった。 本研究によって、安全規制を評価するための有効なモデルが開発され、上記のような、これまでシミュレーション等で検証されることのなかった多くの知見を得ることができた。
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