2006 Fiscal Year Annual Research Report
高温火山ガスから発生するSPMの観測と発生メカニズム
Project/Area Number |
15310126
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大場 武 東京工業大学, 火山流体研究センター, 助教授 (60203915)
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Keywords | 火山ガス / マグマ / 脱ガス / 硫黄 / 同位体比 / 酸素分圧 |
Research Abstract |
SPMの発生源である高温火山ガスの化学組成を支配する要因を探るために,最近の噴火事例として,各種観測データが入手可能な雲仙普賢岳の火山ガスについて詳細な検討を行った.高温火山ガスの化学組成を再現する物理化学的なマグマ脱ガスモデルを構築した.このモデルは,噴火前のマグマに含まれる揮発性成分の濃度と,揮発性成分に関する気相-マグマ間の分配係数に基づく.構築したモデルによると,溶岩ドームの西側付け根で放出されていたCO_2に富む高温の火山ガスは,約4kmの地下でマグマから分離した気相を代表していることが判明した.脱ガスしたマグマは依然として揮発性成分を含んでおり,地表までの上昇過程において,地下1km以浅で再脱ガスすることが示された.2回目以降の脱ガスで発生する火山ガスは,HC1に富んでいることが示された. SPMの発生量は,火山ガスに含まれるSO_2の放出量に依存する.大量のSO_2ガスの放出が長期間継続する三宅島のマグマ脱ガス過程を探るために,アルカリ溶液静置法により山麓で採取された火山ガスの硫黄同位体比を測定した.観測された硫黄同位体比は日本島弧の第四紀火山に特有な同位体比に一致したが,時間の経過とともに,同位体比が上昇する傾向がみられた.この上昇を,マグマの開放系脱ガスで説明する場合,気相-マグマ間の同位体分別係数は,0.9990〜0.9997であることが示唆された.この係数は脱ガス場の酸素分圧に依存し,要求される酸素分圧は,常用対数単位で,Ni-NiOバッファーよりも+0.6〜+1.2高いことが判明した.この値は,既存の鉱物学的研究で推定されている酸素分圧よりも有意に高い.同様な酸素分圧のギャップはキラウエア火山などでも発見されているが詳細な原因は解明されていない.マグマ脱ガスにおける酸素分圧の問題は,今後追及すべき研究課題であると認識された.
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Research Products
(1 results)