2005 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアにおけるイスラームと政治:多層的・比較的アプローチ
Project/Area Number |
15310163
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北川 誠一 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (50001813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松里 公孝 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (20240640)
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Keywords | ムフティー庁 / タタルスタン / バシュコルトスタン / ダゲスタン / チェチェン / ワッハーブ派 / ジャマーアット / スーフィー教団 |
Research Abstract |
ロシアのイスラーム教徒は、3段階のレベルで政治と関わっている。 第1のレベルは連邦レベルである。ロシアのイスラーム教徒には、ウーファに中心を置くタージュッデイーン、モスクワを本拠とするガイヌットデイーンの二つの全国組織(ムフテイー庁)があり、2001年まで二つの全国組織は拮抗する地位にあったが、イラク戦争開戦にさいしてのタージッデインの対米聖戦宣言以後ガイヌッデイーンの組織がロシア・イスラームを代表する組織としての地歩を得ている。 第2の共和国レベルでは、タタールスタンとバシュクルトスタンでは、社会の文化的イスラーム化現象と相反して、共和国ムフテイー庁は政治的影響力を持っていない。ダゲスタンでもムフテイー庁は積極的政治的影響力を行使しようとすることはまれであるが、社会のイスラーム化はタタルスタンより格段に強く、ムフテイーの社会的権威は強力である。但し、ダゲスタンの場合特殊であるのは、スーフイー教団の長が、人間関係を通じて、政治と宗教に強い影響力を持っていることである。チェチェン共和国は前大統領がムフテイーであったことと、国内が準戦時体制下にあることによって、共和国ムフテイー長の政治的動員は重要な意味を持たない。 第3のレベルは、地域・教区レベルである。タタルスタンとバシュコルトスタンにおいて地域のイスラーム指導者の影響力は信仰上の指導者に限られ、彼らに期待される政治的機能は、所謂「ワッハーブ派」に対抗しうる「正統な」イスラーム教を教えることであって、地方政治はむしろ古い政治・行制的リーダーに握られている。ダゲスタンにおいては地域的宗教リーダーの発言力は強く、地域安定化の要因になっている。チェチェンにおいては地域ごとの信徒団体ジャマーアットの中に、反ロシア・コマンド招集単位となる場合もありネガテイヴな政治的動員力が強まっている。
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Research Products
(4 results)