2004 Fiscal Year Annual Research Report
ネイションとステートの形成プロセスにおけるウクライナ・アイデンティティの確立
Project/Area Number |
15310170
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Research Institution | Heisei International University |
Principal Investigator |
末澤 恵美 平成国際大学, 法学部, 助教授 (20348329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 英彦 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (60092459)
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Keywords | ソ連崩壊 / 独立国家構想 / 標準ウクライナ語 / オレンジ革命 / 大統領選挙 / ウクライナ化 / 脱ポーランド化 / ジェンダー |
Research Abstract |
ソ連崩壊によるウクライナの独立及び国家建設の過程を、制度・機構構築(ステート)の側面と、共同体としての意識創出・アイデンティティの形成(ネイション)の両面から分析すべく、歴史・言語・政治・社会集団の関係といった視点を中心に、現地調査(インタビュー、アンケート、資料収集)、研究会、学会報告等を行なった。 独立後、ウクライナの改革は思考錯誤の中で進められ、1990年代後半から民主化の後退が問題視されてきた。2004年はおりしも大統領選挙があり、現政権の路線が継続するか、新たな勢力による変革がなされるか注目を浴びたが、政権側の不正をめぐり選挙は大規模な大衆運動へと発展し、いわゆる「オレンジ革命」が発生、それぞれの候補者への支持者が国を二分し、国家分裂の危機に至った。研究代表者の末澤は、政府代表の選挙監視員として2度現地での選挙を観察し、「革命」をもたらした要因を、歴史的背景、国家建設の過程における国民統合の問題、ウクライナをとりまく国際関係といった視点から、各種の講演会や報道番組、新聞等で報告・解説し、ウクライナに関する日本人の理解促進と情報普及に寄与した。 研究分担者の中澤は、平成15年度に引き続き、国語としてのウクライナ語の確立・浸透過程について、ロシア語優勢地域とウクライナ語優勢地域、ポーランド語の影響の強い地域でのアンケート調査、インタビュー、資料・情報収集等を行なった。その結果、2003年頃から、1920年代のレーニンによる「ウクライナ化政策」をも上回る勢いでウクライナ語辞書が激増し(語彙数の増加を含む)、地方におけるウクライナ語の浸透も認められた。これは、独立後国家事業として進められてきた辞書の編纂作業が10年かかって達成されたことを示しているが、その反面、ロシア語優勢地域では「上からのウクライナ化」に対する反発も見られ、国民統合に必須の標準語としてのウクライナ語の確立を政府が進めることの難しさが露呈された。また、中澤はその様な状況の中で英語教育が進む事の危険性も指摘し、研究の成果を論文として発表した。 研究協力者である柳澤秀一(育英工業高等専門学校非常勤講師)、南野大介(外務省中東欧課事務官)、光吉淑江(東洋英和女学院大学非常勤講師)、小川暁道(東京外国語大学大学院)らも、前年度に引き続き現地調査、研究、分析を行ない、光吉は論文を発表した他、アメリカで行われた2つの国際学会(「ナショナリティ研究学会」及び「アメリカ・スラヴ研究促進学会」)に出席、後者において報告した。柳澤も2年間の研究を、学会報告及び論文として発表した。
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Research Products
(3 results)