2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15310171
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MELNIKOVA Irina 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (10288607)
松本 賢一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教授 (00309072)
服部 文昭 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80228494)
三谷 惠子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (10229726)
石川 達夫 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (00212845)
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Keywords | スラヴ / ナショナリズム / スラヴ語 / 汎スラヴ主義 / 文化受容 / ロシア映画 / 亡命 / 都市文化 |
Research Abstract |
本年度はスラヴ諸国をテリトリーとする各人の研究を深めながら、他のスラヴ諸国との関係を具体的にイメージしていくことをめざした。 言語研究を中心とするグループでは、服部は17世紀の文献を材料に動詞の時制・アスペクト体系に注目しながら、近代ロシア語の標準語の成立過程を探り、三谷は上ソルブ語の語彙の変遷研究を続けつつ、それをスラヴ語の比較形態論に発展させようとしている。またフィアラはチェコ語と日本語語順のコーパスの作成を続けながら、西スラヴ諸語の特質を探求している。そして、これらの研究をスラヴという広い視野から眺めるために、本年度は春に三谷が上ソルブ語の語彙について、秋には服部が17世紀のロシア語動詞の過去時制について研究報告を行ない、議論を深めた。また、秋には比較言語学者のアンドレイ・マルチュコフを招いて、タイポロジカルな言語研究の可能性についても討議した。 文化研究グループでは、映画をテーマとするメーリニコワは、ロシア映画に見られるスラヴ諸民族親交の神話を検討し、演劇をテーマとする楯岡は、チェーホフに見られるロシア/スラヴ性と普遍性について考察した。さらに、大平は帝政ロシアの無声映画を都市の消費文化とのかかわりで考究しているが、諫早も亡命文学を考える手がかりとしてアーバニズムに着目しており、このテーマはいっそうの展開が期待できる。 本年度はまたナショナリズムにも何人かのメンバーが関心を向けた。石川はチェコ民族復興運動を汎スラヴ主義とのかかわりも含めて研究しているが、松本もドストエフスキイ研究の重要な側面として、彼の汎スラヴ主義に注目し、バルカンを舞台にした戦争に対するドストエフスキイの反応を考察しながら、宗教の問題にも関心を広げている。また、日野はウクライナの19世紀を主な研究領域としながら、ウクライナとロシアの民族問題に大きな関心を寄せているし、三谷も言語研究と平行して自治都市ドゥブロヴニクと南スラヴ地域との文化史的結びつきを考究している。そして、春には諫早が「中東欧諸国におけるロシア亡命文化」について、秋には松本が「露土戦争とドストエフスキイ」について報告したが、こうした視点はロシア対スラヴという構図を考察するための共通理解形成に役立った。共同研究も2年目を迎え、しだいに個別的な研究を結ぶものが見えてきたといえよう。
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