2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15310171
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MELNIKOVA Irina 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (10288607)
松本 賢一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教授 (00309072)
服部 文昭 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80228494)
三谷 惠子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (10229726)
石川 達夫 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (00212845)
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Keywords | スラヴ / 汎スラヴ主義 / 文化受容 / スラヴ語 / 亡命文化 / ナショナリズム / 映画理論 / メディア |
Research Abstract |
三年目をむかえ、本年度は各人の研究をタテに深めながら、同時にヨコのつながりを強めて、2006年度末に刊行を予定している成果報告書に向けて、研究のいっそうの具体化、明確化をはかった。 まず、本年度も春秋2回の研究会を開催したが、春には楯岡が「フョードル・コミッサルジェフスキーとイギリスにおけるチェーホフ受容」と題した報告を行ったほか、美術の専門家福間加容氏より「ロシアにおける日本美術の受容」という講演を拝聴した。また秋にはメーリニコワが「スラヴ諸民族親交の神話(ロシア語)」、フィアラが「チェコ語と日本語の情報構造」と題した報告を行った。これらの報告は文化・言語の領域におけるスラヴ文化の越境と交錯の諸相を明らかにするものであり、参加者にとって大きな刺激になったといえよう。 さて、本年度は文化研究グループにおいては、楯岡は20世紀ロシア演劇が国境を越えて受け入れられた現実を分析しながら、アヴァンギャルドと普遍性・ロシア/スラヴ的な特性とのかかわりについて考察を深めた。メーリニコワは1920-30年代のソヴィエト映画に見られるスラヴ諸民族親交の神話について、それがソ連邦の愛国主義と深くかかわっていることを明らかにするとともに、ウクライナ、チェコスロヴァキアといった国々がもつ意味の違いについても考察した。大平は認知映画論とエイゼンシュテインのアトラクション論、認知心理学の先駆とされるヴィゴツキィの心理学理論についてその影響関係を視野に入れながら、スラヴの映画理論を再構築しようとしている。一方日野はゴーゴリに焦点を当てながら、ウクライナとロシアにおけるその受容と評価を比較することによって、ロシア文学史とウクライナ文学史の再検討をめざしており、松本は露土戦争当時のドストエフスキイの政治的発言を追いながら、ドストエフスキイの汎スラヴ主義の発生と展開についてさらに考察を深めている。汎スラヴ主義に関しては、石川もマサリクの批判を足がかりに、その起源をチェコ・バロックの時代までさかのぼって、それがスラヴ・ドイツ関係の反映でもあることを明らかにした。諫早はチェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィアなどにおける亡命ロシア文化とポーランド、バルト諸国における亡命ロシア文化を比較しながら、「同化」と「共生」という語に注目している。 言語研究グループでは、三谷は旧ユーゴスラヴィア地域の現在の文化状況をメディアの言説とメディア状況という角度から考察するとともに、南スラヴ諸語の移動を表す基本的動詞についても分析を進めている。服部は古代ロシア文語のハイブリッド性について検討しながら、近代ロシア語の標準語の成立過程についても研究を深めている。フィアラはコーパス研究を進めながら、スラヴ語と日本語の情報構造についても検討を加えている。こうした多様な研究を来年度はよりまとまりのあるものとして、成果報告書に具体化していきたい。
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