2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15310171
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MELNIKOVA Irina 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (10288607)
服部 文昭 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80228494)
三谷 惠子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (10229726)
石川 達夫 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (00212845)
楯岡 求美 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (60324894)
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Keywords | スラヴ / 汎スラヴ主義 / スラヴ語 / 亡命文化 / ロシア映画 / 文化受容 / ロシア演劇 / アヴァンギャルド |
Research Abstract |
最終年度にあたる本年度は、まず9月に北海道大学の望月哲男教授が研究代表者を務める科学研究費補助金・基盤研究(B)「スラブ・ユーラシアにおける東西文化の対話と対抗のパラダイム」との合同研究会を実施し、こちらからは石川が「スラヴ語・スラヴ文化を衰滅から救え!-汎スラヴ主義の起源と展開-」、大平が「チェコ・アヴァンギャルドのブックデザインについて-カレル・タイゲを中心に」と題した報告を行った。10名ほどで行われているいつもの研究会とは異なり、30名近い参加者を得て活発な論議が行われ、スラヴ文化の多様性と類縁性が参加者一同にいっそう深く認識された。 そして、2月には4年間の研究の総決算として研究成果報告書「スラヴ世界における文化の越境と交錯」を刊行して、諫早は1920-30年代に中東欧諸国で、ロシア亡命文化がどのように開花した(あるいは開花を阻止された)かを国ごとに検証し、松本(本年度は在外研究のため分担者から外れた)は、ドストエフスキイの後期の政治的発言を分析して、露土戦争を契機に、ロシアこそがスラヴの正教徒をトルコから解放し、全スラヴ民族を統一しなければならないという汎スラヴ主義的信念が生まれたことを明らかにした。一方、石川はスラヴ人同士の連帯協力を唱える「スラヴ主義」の歴史全体を考究し、そこには親ロシア的な汎スラヴ主義と反ロシア的な複スラヴ主義が存在していたが、近年こうしたスラヴ主義そのものが解体の危機にあると主張したが、三谷はとくに下ソルブ語の現状を分析して、民族的な独立を果たせなかった一スラヴ民族の運命を具体的に検証した。さらに、Melnikovaはソヴィエト映画において、スラヴの諸民族がどのように描かれてきたかを歴史的に検討して、映画がソヴィエトから見たスラヴ諸民族の政治的意味の変化を如実に反映していることを実証し、楯岡はスタニスラフスキーやメイエルホリドの演劇理論がロシア人亡命者を通してどのように、ヨーロッパ諸国に伝えられたかを論じた。そして、大平はチェコスロヴァキアのアヴァンギャルド芸術家カレル・タイゲのブックデザインに焦点を当てて、ソヴィエトの構成主義やシュールレアリスムがどのように受容され、変容されたかをたどった。 この報告書には収められていないが、このほか服部は近代文章語としてのロシア語の成立について、日野はウクライナにおける国民文学の成立について、フィアラはプラハ言語サークルの理論のスラヴ語研究への応用について研究をまとめており、4年間の共同研究は具体的な焦点を結んできたといえるだろう。 なお、研究成果は冊子体の報告書のほか、ホームページhttp://www.kinct-tv.ne.jp/~yisahaya/Kaken-2.pdf上でも公開している。
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Research Products
(17 results)