2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15310173
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
押川 文子 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 教授 (30280605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 和夫 東京都立大学, 人文学部, 教授 (70142015)
栗本 英世 大阪大学, 大学院・人間科学研究科, 教授 (10192569)
帯谷 知可 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (30233612)
臼杵 陽 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 教授 (40203525)
小杉 泰 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (50170254)
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Keywords | 紛争 / 暴力 / 地域研究 / 平和構築 / イスラーム / 緊急・復興支援 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
本年度は、紛争のなかで生まれる言説分析に焦点を当てた。まず「敵イメージの形成:排他的ディスコースの生成と暴力の再生産」と題する研究会を開催し、「敵」に対する排外的ディスコースが、新たな暴力を正当化する過程について、詳細に検討した。事例として、1)インドネシにおけるマルクとポソの「宗教対立」、2)インドにおけるヒンズー教徒の排外的ナショナリズム言説、3)中国とロシアの国境紛争をめぐる外交、4)イスラエル/パレスチナにおける「アラブ系ユダヤ人」をめぐる言説形成を取り上げた。 この研究会での議論をさらに発展させるべく、平成16年12月18-19日に国際シンポジウム「9.11後の世界における政治的暴力と人間の安全保障」を開催した。国外研究者9名、国内研究者4名による英語報告13本を得て、4つのセッションにおいて、「テロリズム」概念の批判的再検討、「敵」創出のメカニズムおよび植民地主義的暴力の歴史的跡付け、9.11後のアフガニスタン、イラク、パレスチナの「対テロ戦争」の現状、平和構築戦略としての「人間の安全保障」の可能性などを議論した。 「敵」イメージの形成や排他的ディスコースの生成過程を比較検討すると、生成過程のメカニズムは似ていても、言説を作り上げていく内容や歴史的過程は、地域性を強く反映していることが分かった。したがって、これらから共通性を引き出すことはきわめて難しく、逆にそうすることによって問題が矮小化される危険性がある。敵イメージや排他的ディスコースを脱構築し、紛争の解決の糸口を見出していくためには、引き続き、地域の視点から詳細かつ丁寧な事例研究を積み重ねていく重要性が強く認識された。
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Research Products
(7 results)