2004 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期からルネサンスに至る「言葉」理解-形而上学から人文主義へ-
Project/Area Number |
15320004
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻野 弘之 上智大学, 文学部, 教授 (20177158)
長町 裕司 上智大学, 文学部, 助教授 (90296880)
佐藤 直子 上智大学, 文学部, 助教授 (60296879)
川村 信三 上智大学, 文学部, 助教授 (00317497)
O'LEARY J.S. 上智大学, 文学部, 助教授 (50235818)
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Keywords | 言葉 / 人文主義 / 論理学 / 修辞学 / 唯名論 / 宗教改革 / スコラ学 / 文法学 |
Research Abstract |
本研究2年目にあたる平成16年度には、主として以下のテーマを研究し、研究成果を得た;1)スコラ学の言語観は自由学芸・三学から発し、13世紀後半から1320年代まで、「普遍(思弁)文法」において言葉を存在論的に基礎づけようとしたのに対し、14世紀前半からイギリスのオッカム派の名辞論理学は唯名論的認識・存在論を背景に表示諸形態の独自性を発見し、それに基づく14世紀半ばから16世紀に至るフランスのブリダヌス主義の論理学は言語使用における主体の自由と習慣性を強調した。一方、新プラトン主義的ドイツ神秘思想において言葉は精神内の神的語りと理解され、この宗教的伝統は「新しい敬虔」を通して宗教改革に至り、聖書の言葉を行為・言語的出来事として理解されるものへと変遷した。2)イタリアの人文主義では14世紀初頭以来、12世紀の古典哲学・文学復興に基づき、古代ローマの修辞学にならい、優雅な古典ラテン語を普遍的模範とし、さらに国語の詩的表現力も重視しながら、言葉を文献学の対象、または自由な市民の人格形成の基本要素とし、その実践的・倫理的、さらに文学的・政治的・教育学的機能に関して研究し、言葉の歴史性と解釈可能性を重んじる人間中心的言葉理解が実現されたが、一貫した哲学的理論にまでは発展しなかった。3)16世紀フランス哲学では人文主義と宗教改革の影響の下で論理学が徹底的に排除され、修辞学の役割も相対化されるとともに、アリストテレスの『トピカ』とドイツ・ヒューマニズムの弁証論をとり入れて、実践的に使用される言葉から普遍的な真理発見の方法論が展開されたが、人文主義的学問の基礎づけのこの試みは16世紀後半に言葉理解の問題から離れて、幾何学的認識に規範を置く初期近世の方法意識によって代替された。
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Research Products
(10 results)