2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15320018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
池田 忍 千葉大学, 文学部, 助教授 (90272286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬渕 明子 日本女子大学, 人間社会学部・文化学科, 教授 (30114656)
小勝 禮子 栃木県立美術館, 学芸課, 主任研究員 (80370865)
天野 知香 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (20282890)
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Keywords | 女性美術家 / ジェンダー / 近代国民国家 / 展覧会 / 美術批評 / 女性像 |
Research Abstract |
本年度は、19世紀後半から20世紀半ば頃までの日本、および西欧の女性美術家研究の基礎となるデータ・ベース構築の準備作業と体制作りを行った。文献資料に関しては、書籍(日、韓、中、英、仏、独、伊語)と組織資料、美術家資料である。書籍はおもに女性美術家のモノグラフ(個人研究)と、展覧会カタログ、美術館所蔵品カタログ等を幅広く収集・閲覧した。組織資料は女性美術家が活動した場である展覧会、私塾を中心に集めた。美術家資料は雑誌論文、作品のカラーコピー、PCに取りこんだ画像などである。 加えて、日本の女性美術家に関しては、教育機関として重要な位置を占める女子美術大学資料館・同大学同窓会が所蔵する、学生募集要項・卒業アルバム・同窓会誌等の資料を閲覧した。これらの資料は、女性美術家の出身階層・教育制度と理念の推移、さらには彼女らの卒業後の創作活動を支えるネットワーク等の解明に資するところが大きい。また、美術家本人や遺族のもとに遺された、あるいは地域の諸機関が寄贈・寄託を受けて管理する作品や関連資料についても、時代や地域・創作領域を考慮した上で、研究協力者と分担・連携して訪問取材・調査を進めた。 西欧の女性美術家に関しては、馬渕が19世紀後半、天野が20世紀前半を担当し、対象となる女性美術家の関連文献・資料の収集および整理を行った。そのひとつとして2003年8月に馬渕がイギリス、フランスでの資料収集・調査を行なった。各分担者は、購入した機材を使用して、データを打ち込み、資料整理を平行して進めている。 また、全体研究会を二度開催し、収集しつつある資料・データをもとに、ジェンダー理論・ジェンダー史研究の近年の成果を踏まえ、女性美術家のあり方や活動、彼女達をめぐる諸状況・諸傾向、および女性像の制作と受容について具体的な討議を深めた。特に、海外共同研究者であるカン・テヒ氏を迎えた研究会では、韓国現代の女性美術家の創作活動とその受容・評価をめぐる議論が紹介され、日本と欧米に偏ることなく、近代国家の形成と成熟にともなう「女」の概念の構築・展開の過程について討議し、美術表現を社会的機能とのかかわりのなかで考察することの重要性を確認した。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] 池田 忍: "日本美術史と「女」"歴史評論(特集 美術史学と歴史学の現在). 634号. 3-13 (2003)
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[Publications] Ikeda Shinobu: "The Potential of Japanese Art History"The Current State of Research on Japanese Art History and Related Issues, special issue of Acta Asiatica : Bulletin of the Institute of Eastern Culture. 85. 105-120 (2003)
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[Publications] 天野 知香: "マチスと「絵画」の他者"西洋美術研究. NO.9. 126-149 (2003)
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[Publications] 小勝 禮子: "美術の制作と受容をめぐって-社会、ジェンダー、その他の要素"芸術批評誌REAR. 2003年10月. 21-29 (2003)
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[Publications] 小勝 禮子: "2002年韓国のジェンダーと美術-千野香織さんを偲んで(香川檀・小勝禮子、連載「アートとジェンダーをめぐる往復書簡#1」)"diatxt.(ダイアテキスト). 9号. 90-95 (2003)
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[Publications] 小勝 禮子: "壊れゆく「世界」を瞑想する(香川檀・小勝禮子、連載「アートとジェンダーをめぐる往復書簡#2」)"diatxt.(ダイアテキスト). 2. 109-115 (2003)
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[Publications] 小勝 禮子: "自然・身体・女性-歴史を担う女性身体-(香川檀・小勝禮子、連載「アートとジェンダーをめぐる往復書簡#3」)"diatxt.(ダイアテキスト). 11号. 108-115 (2003)
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[Publications] 馬渕 明子: "林忠正が日本と西洋に残したもの"林忠正宛書簡・資料集(木々康子編、高頭麻子訳) 信山社. 489-503 (2003)
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[Publications] 天野 知香: "アンリ・マチス-デザインと「芸術」"越境する造形:近代の美術とデザインの十字路 晃洋書房. 79-97 (2003)