2003 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀における戦争と表象/芸術-展示・映像・印刷・プロダクツ-
Project/Area Number |
15320019
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
長田 謙一 千葉大学, 教育学部, 教授 (20109151)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 直之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (30292858)
ハーイ ピーター・B 名古屋大学, 大学院・国際言語研究科, 教授 (90208900)
池田 忍 千葉大学, 文学部, 助教授 (90272286)
久留島 浩 国立歴史民族博物館, 助教授 (30161772)
安松 みゆき 別府大学, 文学部, 助教授 (40331095)
|
Keywords | 戦争 / 表象 / 芸術 / 植民地 / 日本 / 展示 / 映像 / 印刷 |
Research Abstract |
共同研究初年度であるため、全体としては、(1)これまでの各自の研究成果に立脚して問題意識の共有化をはかり(そのために都合三階の研究例会を開催した)、(2)基礎調査を中心に各自の分担課題の研究を進めると言う形で研究を行い、条件に応じて研究成果を各自発表した。 1 例会は7月5日(全体討議)・12月21日(小沢・木村の報告/森・長田のコメント)・3月6日(タンカ・上村の報告に,総研大生具及び千葉大博士課程院生森の関連テーマ報告)。本年度中に、共同研究参加者の、本テーマの基盤となるこれまでの研究業績にかかわって受賞が相次いだことも特筆しておく(河田:早稲田大学美術史学会賞、小沢:倫雅賞、木村:倫雅賞、ハーイ:THE IMPERIAL SCREENはThe Society for Cinema and Media StudiesBook Award for 2004) 2 本テーマにかかわる共通の基礎的資料として、「アサヒグラフ」「写真週報」「美術」「NIPP0N(復刻)」等をそろえ、活用を図ったほか、次に示すような研究を進展させた。 長田は日本・ドイツの比較を中心軸に据えて古賀春江の「戦争機械」表象・ナチスドイツのKdF及びその日本との関連・第2次大戦後の「モダン」イメージ形成を一連のテーマとして探求。安松/河田はモダニズムを代表する評論活動を行った板垣鷹穂の戦時下・戦後期の言説を考察し、さらに安松は更に両大戦期のドイツにおける日本イメージの、河田は15年戦争期軍事建造物の基礎調査を進めた。森もまた、「八紘-宇之基柱」に関する基礎調査を行い、更にセン時期の工芸・デザインの調査を進めた。一之瀬は、従軍記念誌/アルバムに「戦争」イメージの形成過程を探り、久留島は「植民地支配」家の中国・朝鮮における各種博覧会における「異文化」表象を調査し、池田は同時期同地の「日本女性」表象を特にフェミニズム研究の視点から研究した。木村もまた、戦時下脚光を浴びた在日朝鮮のダンサーに関する基礎研究を通して、戦時下に屈折する女性・「外国人」表象を探求した。ハーイは溝口健二監督の主な脚本家依田義賢の戦中日記等戦時下日本映画の更に立ち入った調査を進め、木下は、明治期に戦争と関連しつつ変貌する旧大名コレクションに関する評価変容史的角度を設けて研究を進め、タンカは、15年戦争期の日本の宗教者の言説・行動に関する基礎調査を進め、リヒターは、戦争による日本の消費文化の変容に関する調査研究を進めた。以上は、主に日本を核ないし中心とする研究であるが、本共同研究の中では更に、上村がファシズム期イタリアの彫刻史研究を進め、鴻野が現代ロシア美術における戦争と記憶の表象の研究、木村がナチス期にかかる画家ノルデの研究、長田が戦後東西ドイツにおける冷戦表象の研究を進め、「戦争と表象/芸術」共同研究を世界的視野のもとにおくのに貢献した。第2年度は、異常の個別調査研究を更に進展させると共に、討論を通してテーマにかかわる総括的な議論を構築していく予定である。
|
Research Products
(26 results)
-
[Publications] 長田謙一: "変容する「複製」の中のエステティーク-模倣・イミテーション・ダウンロード-"美術科教育学会記念講演・シンポジウム報告書. 25-32 (2003)
-
[Publications] 金子淳: "「歴史展示の政治性-「歴博」の前身・国史館計画の事例をもとに」"国立歴史民俗博物館編『歴史展示とは何か』アム・プロモーション. 49-77 (2003)
-
[Publications] 金子淳: "幻の国立歴史博物館「国史館」とその周辺"歴博. No.118. 18-23 (2003)
-
[Publications] 金子淳: "戦後生活資料へのアプローチ"松戸市立博物館紀要. 第10号. 95-118 (2003)
-
[Publications] 三宅晶子: "<小さな門>は開くのか? ベンヤミン「歴史の概念について」分析"東北ドイツ文学研究. No.4. 43-75 (2003)
-
[Publications] 三宅晶子: "『心のノート』のテクスト・イメージ分析"現代思想. 2003 4月号. 122-138 (2003)
-
[Publications] 三宅晶子: "教育基本法「改正」の危機とは何か"インパクション. 135号. 50-66 (2003)
-
[Publications] 三宅晶子: "「愛国心」はどのように教育され、法制化されようとしているのか-『心のノート』を中心に"季刊 教育法. No.138. 17-25 (2003)
-
[Publications] 安松みゆき: "美術史家板垣鷹穂の軌跡"明治美術学会『板垣鷹穂シンポジウム報告書』. 8-22 (2004)
-
[Publications] 鴻野わか菜: "象が絵を描く時-コマール&メラミッドの傑作を探して"窓 2003年10月. 126号. 38-41 (2003)
-
[Publications] 鴻野わか菜: "大好きな画廊-モスクワ・現代美術のある場所"窓 2003年12月. 127号. 34-37 (2003)
-
[Publications] 一ノ瀬俊也: "日本陸軍と"先の戦争"についての語り-各連隊の「連隊史」編纂をめぐって"史学雑誌. 112-8. 54-69 (2003)
-
[Publications] 河田明久: "板垣鷹穂-戦時下の思考"板垣鷹穂シンポジウム報告書. 36-50 (2003)
-
[Publications] 池田忍: "日本美術史と「女」"歴史評論(特集 美術史学と歴史学の現在). 634号. 3-13 (2003)
-
[Publications] IKEDA, Shinobu: "Modernism ・ Gender ・ Imperialism : Representations of Women from the 1920's to the 1930's."Art : Modern and Contemporary Art in Korea & Japan, edited by Ewha Womans University Museum, Ewha Womans Press. 152-186 (2003)
-
[Publications] 森仁史: "明治十三年・ローマの空"美術フォーラム21. Vol.9. 44-48 (2003)
-
[Publications] 森仁史: "美術の誕生と工芸品輸出"『カラー版日本デザイン史』美術出版社. 23-33 (2003)
-
[Publications] 長田謙一他分担共著: "アートは社会の未来への投資"トヨタ自動車株式会社・エイブルアート・ジャパン. 118 (2003)
-
[Publications] 長田謙一, 久留島浩を含む分担共著: "歴史展示を考える-民族・戦争・教育"国立歴史民俗博物館(印刷中). (2004)
-
[Publications] 西谷大, 寺田匡宏編, 久留島浩(分担): "『歴史・災害・人間』下巻(『歴史系』博物館の可能性PP.124-134)"財団法人歴史民俗博物館振興会. (2003)
-
[Publications] 国立歴史民俗博物館編, 久留島浩分担: "歴史展示とは何か-歴博フォーラム 歴史系博物館の現在・未来(「『歴史系博物館の現在・未来』開催にあたって」PP.9-21)"アム・プロダクション. (2003)
-
[Publications] 三宅晶子: "「心のノート」を考える"岩波ブックレット. 71 (2003)
-
[Publications] 子どもと教科書全国ネット21編・三宅晶子共著: "ちょっと待ったぁ!教育基本法「改正」"学習の友社. (2003)
-
[Publications] 河田明久共著: "造形学研究(河田は「ヌードのへそ-裸体画における日本的なるもの-」PP.51〜84)"武蔵野美術大学出版局. (2003)
-
[Publications] 森仁史共著: "明治・大正期における図案集の研究-世紀末デザインの移植とその意味-(「デザイン教育機関蔵書に見る図案集-東京美術学校・東京高等工芸学校・京都高等工芸学校」)"国書刊行会. (2003)
-
[Publications] 木下直之(分担): "小森陽一・成田龍一編『日露戦争スタディーズ』(pp.22-35)紀伊国屋書店"日露戦争を語るもの. (2004)