2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本における「うた」の総合的研究 そのフュージョンとアイデンティティーをめぐって
Project/Area Number |
15320020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 良明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00126278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩佐 鉄男 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50203360)
木村 秀雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10153206)
松岡 心平 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70173812)
PATRICK De Vos 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00242032)
長木 誠司 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50292842)
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Keywords | 日本 / 大衆文化 / ポピュラー音楽 / パフォーマンス / 文化融合 |
Research Abstract |
日本の近現代における「うた」の進化をもたらした二つの背反する方向付けの力として、本研究は、19世紀欧米のエリートの間で標準化した歌唱と、20世紀のアメリカを発信源とする現代のグローバルな「ブラック・ミュージック」に焦点を当てている。平成16年度も、これら二つの前線での研究成果が主体となった。 アメリカ合衆国では、セントルイス、クラークスデイル、ニューオーリンズなど6つの都市で実地調査を行い、現在に生きるさまざまな伝統ジャンル(ゴスペル、ブルース、ラグタイム、ブルーグラス、大衆向けカントリー音楽)の実状を収録した。また、1830年代の黒塗り芸、1890年代のジャーナリズム、および1920年代のレコード産業の調査から、「黒人音楽」といわれるものが、アメリカの芸人的想像のなかで「発明」された経緯を、具体的な情況のなかで記述することが始まった。このように「黒い」サウンドの特徴を民族音楽的な記述から解放することで、近代期日本で笑いの対象となった、やはりある意味で「黒い」音楽を、これと比較する視座が開けた。これらの成果は佐藤の2本の論文にまとめられている。 一方、近代ヨーロッパの正統的歌唱法の日本での定着に関する調査の成果は、イタリアの学会で、日本人による「マダム・バタフライ」の歌唱の実状を論じた長木論文に結実した。こうしてもたらされた疑似ベルカント的歌唱が、戦後の日本の歌謡曲の中で、さまざまな日本の伝統歌唱、ジャズ・ボーカルやロックに由来する歌唱と複雑にからみあう様態を、1970年代の歌謡曲の徹底的な聴き取りから明らかにする作業が、来年度の研究の焦点となる。 「歌謡曲・ポピュラー音楽デジタル・アーカイブ」には、アメリカとフランスにおける20世紀の最初の30年間の珍しい録音をはじめ、選ばれた約5千タイトルが新たに加わった。
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Research Products
(5 results)