2004 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代における「書画情報」の総合的研究-『古画備考』を中心に-
Project/Area Number |
15320024
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Research Institution | Musashino Art University |
Principal Investigator |
玉蟲 敏子 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (10339541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相澤 正彦 成城大学, 文芸学部, 教授 (10159262)
大久保 純一 人間文化研究機構国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教授 (90176842)
田島 達也 京都市立芸術大学, 美術学部, 専任講師 (40291992)
並木 誠士 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (50211446)
星野 鈴 東京造形大学, 造形学部, 教授 (90366378)
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Keywords | 古画備考 / 書画 / 江戸時代 / 情報 / 江戸 / 古画趣味 / 美術史 / 備忘録 |
Research Abstract |
本研究は、代表者1名・分担者5名・協力者6名の全12名で構成される研究組織によって推進しており、平成16年度は全員出席の研究会を2回、見学会(調査)を2回開催した。研究会においては代表者の玉蟲が『古画備考』の成立背景となる18世紀末から19世紀前半にかけての都市・江戸における古画趣味の勃興と展開について報告し、以下、田島・相澤の分担者、野口剛・五十嵐公一・井田太郎の協力者が各自の担当箇所の京都画壇、関東水墨画、「狩野門人譜」と京都の狩野派、『槿域書画徴』と『古画備考』の関係、同巻12の連歌・俳譜、巻44の英流について、問題点を整理して報告した。『古画備考』をテキストとして精密に分析し、言及された作品・文献について批判を行なうことによって、従来孫引きによって用いられてきた資料の全体像や現状が明らかになってきた。例を挙げれば、編者の朝岡興禎が参考にした京都情報は白井華陽編著の『画乗要略』程度に過ぎないこと、最初の朝鮮書画伝として近代に編まれた呉世昌著『槿域書画徴』が『古画備考』の「高麗・李朝画人伝」を参考にしているものの、両者間には画人選択において相違のあることなどである。日本伝世の中国絵画に認められる偏向性(南宋絵画、禅僧ネットワーク系絵画の偏重)がやはり朝鮮絵画にも認められ、朝鮮絵画の正史に登場しない不明の画人が収録されていることなどが判明してきた。これらの成果は次年度に刊行予定の報告書において活字化されるが、かなり従来の通説が書き改められることと予測される。 また見学(調査)は、前年に引き続いて東京と関西の古美術商を中心に『古画備考』に所載される作品の実物資料および参考資料の確認を行なった。とりわけ関西の有力な古美術商が直接資料を多数所蔵していることが判明した。このような視点の調査は展覧会向きではない資料の価値を浮かび上がらせることでもあり、所蔵者側から支持され協力を得られることとなった。次年度もまた、海外調査を視野に入れてさらにこの方面の資料調査・現状確認に力を入れる予定である。 平成16年度の実績として特筆されるのは、学生を動員した『古画備考』の本文テキストの入力がほぼ完了したことと、東京藝術大学附属図書館所蔵の『古画備考』原本のディジタル撮影が三分の二強完了したことである。本研究の基礎作業である校合は今後、これらを用いて行なわれることになる。かつて遂行されたことのなかったコンピューター専用のデータ環境の整備により、将来の研究資料の共有化に向かって着実に進んでいるといえるだろう。
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Research Products
(14 results)