2003 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間のドイツにおけるゲルマンとスラブの文化接触とその歴史的意義
Project/Area Number |
15320041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
松本 賢一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教授 (00309072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅昭 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80066282)
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
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Keywords | ワイマール共和国 / ドイツ / ロシア / ユダヤ / ナボコフ / ドストエフスキイ |
Research Abstract |
本研究は最終的にワイマール共和国期のドイツにおけるゲルマン・スラブ両文化の交錯と影響関係を考察の対照としているが、2003年度においては、各研究分担者の専門領域における基板固めを中心とする活動に従事した。 研究代表者松本は、両大戦間のドイツにおけるドストエフスキイ熱が、主として彼の民族主義的言説と非合理性への志向に対する共感に基づくものではないかという仮設に立ち、彼のロシア・キリスト教を至高価値とする言説の分析に着手した。「同胞愛」という、キリスト教世界固有の概念にドストエフスキイが付与したロシア的(正教的)意味合いを、彼の小説作品と評論の双方にまたがって検討し、二篇の論考にまとめるを得た。 研究分担者諫早は、ブライアン・ボイドの大著『ナボコフ伝』の翻訳作業に従事し、ナボコフ研究という自らの研究領域を更に補強しつつ、ベルリン時代のナボコフについての知見を広めていくことによって、ナボコフにとってのベルリンが、単にボリシェヴィキのロシアからの亡命先であっただけではなく、自らが捨ててきた故国ロシアのペテルプルグを想起させる都市として機能していた可能性を指摘し、一篇の論考にまとめるを得た。 研究分担者山本は、ドイツ、ロシアにおけるユダヤ人居住区の実態調査と資料収集に専念すると共に、これまでは専門領域外であったロシアにおけるユダヤ人問題に関する知見を広めるために、ロシアにおけるユダヤ人史の専門家を講師として研究会を開く、あるいはペテルプルグに現存するシナゴーグを訪問してラビに聞き取り調査を行なう等、活発なフィールドワークを行なった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 諫早 勇一: "都市の見取り図 ナボコフのベルリン"言語文化. 第6巻第4号. 553-571 (2004)
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[Publications] 松本 賢一: "『冬に記す夏の印象』における個と全体の関係について"むうざ. 22号. 4-17 (2003)
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[Publications] 松本 賢一: "ドストエフスキイにおける<братство>の概念について"言語文化. 第6巻第2号. 181-200 (2003)
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[Publications] ブライアン・ボイド(諫早勇一訳): "ナボコフ伝 ロシア時代 上下"みすず書房. 728 (2003)