2005 Fiscal Year Annual Research Report
西洋史の諸相における文化的ボーダーランドとマージナリティ
Project/Area Number |
15320105
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
飯田 収治 関西学院大学, 文学部, 教授 (70047116)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿河 雄二郎 関西学院大学, 文学部, 教授 (80030188)
田中 きく代 関西学院大学, 文学部, 教授 (80207084)
横山 良 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (30127873)
赤阪 俊一 埼玉学園大学, 人間学部, 教授 (70337658)
大黒 俊二 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50152096)
|
Keywords | 文化的ボーダーランド / マージナリティ / 孤児列車事業 / 近世フランス王権 / 西欧中世のユダヤ人 / アクロポリスの改造 / ナチ強制収容所 / 古代エジプト王権 |
Research Abstract |
本研究は、複数の異文化社会の間にあってそれらが相互に拮抗し、融合し、共生しあう、それ自体独自のリアリティを有する文化的ボーダーランドに注目して、その生成・発展・消滅のプロセスと構造を西洋史の各時代・各地域に探ろうとするものである。本年も二人の研究分担者を海外に派遣し、現地調査と史料収集に当たらせた。「アメリカ史班」の田中はアメリカ合衆国において特に19世紀の「孤児列車事業」のボーダーランド形成の機能に注目して、その関連史料を調査した。フランスの文書館における近世未公刊史料の収集に従事した阿河(「ヨーロッパ史班」)は、近世フランス王権の発展がマージナリティの諸要因を包摂してゆく過程の解明に手がかりをえた。研究打ち合わせ会では、「西洋古代・中世史班」から赤阪と関が報告した。赤阪は西欧中世におけるキリスト教徒住民とユダヤ人との緊張に充ちた共生関係を論じ、関はアクロポリス改造を通してアテナイの覇権と諸ポリス統合の表象過程を明らかにした。「ヨーロッパ史班」の飯田は、ナチ強制収容所システムが自らその根絶を期したボーダーランド的状況を再生産する場となった、というナチ体制の自己矛盾に注目する報告を行った。なお本年も研究協力者として参加した秋田は、古代エジプトをフィールドとして、古代王権と文化統合に関わる史料調査のため国内出張を行い、打ち合わせ会においてその成果の一端を発表した。本年度は個別の事例研究の成果を積み重ねることに終始したが、全体構想の枠組の有効性は基本的に裏付けられたと考える。そうした基礎作業を踏まえた総括が次年度の課題となる。
|
Research Products
(14 results)