2005 Fiscal Year Annual Research Report
応報的正義と修復的正義の交叉--刑事司法と、複合的正義論への学際的アプローチ
Project/Area Number |
15330001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松村 良之 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80091502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 晃 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90164813)
林田 清明 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50145356)
今井 猛嘉 法政大学, 大学院・法務研究科, 教授 (50203295)
山田 裕子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助手 (10360885)
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Keywords | 応報 / 抑止 / 修復 / 公正の心理学 / 積極的一般予防論 / 被害者学 / 集団 / 儀礼としての刑罰 |
Research Abstract |
今年度は第1に、応報的公正の観点からの刑法理論の再構成を試みた。心理学的知見を踏まえれば、応報刑論は形而上学的な言説ではなく、社会・集団に必然的に伴う懲罰の性質を法律学的に表現したものであり、応報刑と抑止刑という対立項的とらえ方が適切ではない。そのような観点から、刑法理論における積極的一般予防論と心理学的な応報刑論の相似性が指摘される。すなわち、積極的一般予防は「規範の刑罰化による保護対象及び規範遵守の重要性の公的(再)確認を通じた市民の規範遵守意識の強化、犯罪が行われることによって生じた規範侵害状態は処罰により回復されるということの(再)確認を通じた市民の規範秩序への信頼・規範遵守意識の維持・強化」が内容として述べられ、それは社会心理学的な応報刑の理解と非常に近く、いずれの立場も、刑罰が有する個人を超えた集団自体にとっての意味を問題にしていることが重要であることが見いだされた。第2に、刑罰は社会心理学的には毀損された社会的価値の回復確認と被害者の集団における地位回復の二面を有するが、後者を考慮するためには、刑罰の厳罰化あるいはさらなる儀礼化は適切ではなく、被害者の刑事手続きへの参加が重要であることが見いだされた。第3に修復的正義について検討した。修復的正義の要請は応報的正義とは異なった次元のものであり、行為と被害において毀損された人間的関係そのものを取り戻すことに主眼がある。このことは、社会的関係が個々人の個別的な行為とそれの背景にある共同的な活動環境とに区分されて存立していることに対応しており、その意味で修復的正義は社会的共同善の維持に関わる要請であると考えられる。第5に、上記の分析を踏まえて、被害者が参加する刑事手続きと修復的正義の実践の統合が重要であることが示された。
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Research Products
(7 results)