2004 Fiscal Year Annual Research Report
脱植民地化プロセスとしての戦後日本の対アジア外交の展開と国内制約要因
Project/Area Number |
15330035
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
浅野 豊美 中京大学, 教養部, 助教授 (60308244)
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Keywords | 引揚 / 在外財産 / 帝国 / 日韓 / 植民 / 国交正常化 / 琉球 / 日華 |
Research Abstract |
情報公開請求を行った結果、戦後韓国に残された在外財産に関する史料が存在していることが確定されたが、日韓国交正常化に触れる問題があるため、その文書自体は非公開とされた。その代わりに、戦後沖縄の引揚・再移民問題に関して、極めて興味深い史料が公開されたため、その史料を復刻するとともに、事実関係の確定を中心に論文を執筆した。 日本帝国解体後、各植民地から日本人・琉球人の引揚という形で大規模なヒトの移動が展開されたが、その引揚後にかつての「植民者」が「引揚者」として、戦後アジア地域の中の各国民社会に統合されていった過程は、戦争や植民地の記憶に重要な刻印を残したと同時に、戦後日本とアジア諸国の国交正常化過程にも深刻な影を落とした。昨年度に発表した論考のタイトルでもある「折りたたまれた帝国」(『記憶としてのパールハーバー』、ミネルヴァ書房)=戦後日本という観点から琉球地域を見ると、分離され米国の施政権下に置かれた琉球地域でも、引揚・再移民問題が、経済復興や民主化のためのインフラ作りという課題と、琉球地域や琉球人の国際的地位の確立という課題にまたがる重要問題であったことが明らかになったと考える。今後は、琉球地域も視野に入れつつ、東アジア「周辺地域」と戦後日本との国交正常化について、戦前の日本人財産の処分を軸に戦前との連続性を重視し、帝国秩序から国民国家秩序へという全体の視点から論じていきたい。 今まで、戦後の沖縄や琉球問題に関しては、国際政治学と沖縄史の分野で、一方の帰属問題、他方の民主化問題を焦点に展開されてきたが、本年度の研究は、異なる焦点を中心に進められてきた二つの研究潮流を、ヒトの移動とそれが引き起こした社会変動を吸収するための重層的地域的枠組み作りという観点から対話させるものとなった。今後は、在外財産払い下げによるインフラ整備と輸出志向工業化による経済発展が行われた韓国・台湾と、再移民による発展の模索と挫折、基地経済による復興を機軸とした沖縄を対照されながら、帝国秩序の消滅を論じていきたい。
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Research Products
(2 results)