2005 Fiscal Year Annual Research Report
脱植民地化プロセスとしての戦後日本の対アジア外交の展開と国内制約要因
Project/Area Number |
15330035
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
浅野 豊美 中京大学, 教養部, 教授 (60308244)
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Keywords | 引揚 / 在外財産 / 帝国 / 日韓 / 植民 / 国交正常化 / 琉球 / 日華 |
Research Abstract |
本研究は、戦後日本のアジア諸地域との外交関係樹立を、日本人の引揚と日本周辺地域に残された日本人所有の在外私有財産という切り口から分析し、それを国内制約要因としてとらえようとする試みであった。3年間の研究の結果、「引揚者」の中でも、恩給や再就職斡旋から漏れた在野の民間人を中心に在外私有財産を日本政府が補償せよという運動が進められていたこと、「外地」で失った土地と家屋は自らと父祖の移住と開拓を象徴するものであり、海外での自分達の活動が帝国主義の「走狗」と呼ばれることに耐えられないという反発があったこと、そして、日本政府は国内の引揚者への在外私有財産補償責任を回避することを有力な理由として、韓国との関係で補償や賠償を行えず、「経済協力」という形式を取らざるを得なかったことが明らかとなった(最後の結論は日本の情報公開が進まないため、まだ仮説の段階を出ないが、韓国政府公開資料を基に分析を進めている)。 日本帝国解体後、各植民地から日本人・琉球人の引揚という形で行われた大規模なヒトの移動によって、膨大な在外財産とその法的処理が残されたが、それは、戦争や植民地の記憶に重要な刻印を残したと同時に、戦後日本とアジア諸国の国交正常化過程にも深刻な影を落としたということができる。 アメリカでの資料収集から発見された資料を中心に、浅野豊美監修・解説『故郷へ 帝国の解体・米軍が見た日本人と朝鮮人の引揚げ』(現代史料出版2005年9月)を出版し、朝日新聞夕刊〔2005年8月13日全国版〕でも紹介された。それは韓国でも関心を呼び、日韓政府共催の歴史共同研究事業に関与した先生の推薦により、ハングルによる翻訳が行われた。その成果は、韓国のソル出版から『生きて帰ってきた-解放空間からの帰還〔韓国語〕』と題して出版され、韓国中央日報にも紹介された。また、猪口孝・田中明彦・山内昌之他編『国際政治事典』(弘文堂、2005年11月)の出版に際して、本研究課題に関連する項目、「在外財産問題」・「引揚」・「平和友好交流事業」(アジア歴史資料センター)・「植民地」・「居留地」・「治外法権」・「満洲国」・「台湾総督府」を執筆した。
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Research Products
(2 results)