2005 Fiscal Year Annual Research Report
食肉・皮革産業従事者の生活史と被差別アイデンティティの変容についての社会学的研究
Project/Area Number |
15330095
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
桜井 厚 千葉大学, 文学部, 教授 (80153948)
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Keywords | ライフストーリー / 部落産業 / 屠場 / 食肉産業 / 製靴業 / 部落差別 / 被差別アイデンティティ / 職業差別 |
Research Abstract |
本年度は、3年間の研究期間の最終年度にあたり、これまでの聞きとり調査で不備な点を補う補充調査をおこないながら、とくにいままであまり内情が紹介されていない屠場のビデオ撮影など、啓発資料となりうる資料作りもおこなった。聞き取り調査は、個人の生活史を全体的に聞くインタビュー調査であるため、多くの個人情報が盛り込まれている。プライバシーの保護など個人情報保護法との関連もあり、それぞれの語り手の生活史をまとめるにあたってインタビュー対象者の承諾を得ることなどまとめ方についてあらためて語り手や関係者と交渉、確認する作業が必要となった。 本年度は、報告書をまとめることが主眼であったが、まだまだ調査研究が不十分で、なお継続中のところもあり、残されている課題も多い。報告書の全体構成としては、まず第1部と第2部の二部構成とした。第1部では、調査研究の方法から食肉・皮革産業の変化の概要、従事者のライフストーリー(語り)の分析をおこなった。食肉産業に関連するものとしては、牧畜業から小売りの肉屋まで多様だが、とくに一般的に目に触れることがすくない屠畜解体業、すなわち屠場についてのまなざしとそこで働く労働者のライフストーリー・インタビューをもとに、かれらがどのような被差別感を持っているか、屠畜解体の仕事を選択した背景や仕事観などをとりあげた。皮革業としては、東京の荒川・墨田区に多い皮なめし業の歴史と現状の課題、皮革加工業としては、これまで「部落産業」と呼ばれる代表的な職業である「太鼓製作」と「靴製造」の二種類の職人の生活世界を取り上げて、その変転と被差別感を検討した。これまでの「部落差別」の側面から「職業差別」へと差別のまなざしが個別化している傾向とともに、被差別部落以外の出身者の参入ともあいまって系譜的差別の意味合いが薄れつつある状況もうかがえることがわかった。第2部では、それぞれの貴重なライフストーリーの語りを、インタビューの文脈を活かしながら解説を加えた、いわば「資料編」ともいえる構成とした。
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Research Products
(5 results)