2003 Fiscal Year Annual Research Report
わが国における「医療情報開示」の進展とその国際比較
Project/Area Number |
15330098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
平 英美 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (10135501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 久美子 滋賀県立大学, 人間看護学部, 教授 (30252505)
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Keywords | 医療情報開示 / 医師 / 看護師 / 電子カルテ / NHS / 医療マネージャー |
Research Abstract |
15年度は、まず国内での調査を行い、併せて次年度以降の海外研究のための予備調査として英国の医療機関を訪問した。 1.国内調査の一環として、これまでの資料(県内)と比較する意味から、都市部(京都)を調査地域に選定し、医師、看護師を対象にした調査票調査と面接調査を実施した。調査票のデータは現在集計中であり、インタビューのデータも未整理であるが、「医療情報開示」について次のような新しい動向のいくつかを知ることができた。(1)患者からの情報開示請求は依然として多いとは言えないが、医療者側の抵抗感は少しずつ薄らいでいる。(2)その背景として、カルテ開示の法制化は見送られたものの、病院機能評価の開始や、やはり病院を中心とした電子カルテ化の急速な進展を指摘できる。ただし、電子カルテを導入したある病院医師からは、現状では電子カルテ化が患者への医療情報提供を促進しているとは言えないという評価がなされていた。(3)一方、開業医の中には独自の情報提供に取り組む人たちが散見できる。別に説明のための文書(を渡すいわゆる私のカルテ方式)という医師も増えている。カルテ開示を一つの契機に患者に対する医師の姿勢は変化しつつあると言えよう。 2.1月5日より1週間ほど英国のリヴァプール大学病院と聖ジョンホスピス他を訪問した。本格的な調査は、16年度以降に豪州、英国等で実施する計画を立てているが、今回の訪問も一定の成果があったと感じている。(1)いわゆる英国の医療制度であるNHSは、その欠点が指摘されることが多かったが、何度かの制度改革を経て大きく変化していることが実感できた。特に、両施設で、医療全体をコーディネイトする権限を有する「医療マネージャー」という非医療職種が導入され重要な役割を果たしていたのは日本では予想していなかった。(2)医療情報開示に関しては、2005年までに電子化を進めて対応するとのことであったが、現場におけるD-Pコミュニケーションのありかたには大差がないのではという印象だった。(3)そのほか日本との大きな違いを感じたのは、地域社会が医療を支えている点であった。例えば、ホスピスには医療関係者だけでなく、経営や運営、日常活動に地域の住民が多数、ボランティアとして参加していた。GPもまたこのような地域社会と密接に連携しながら運営されていることが診療所の訪問からうかがえた。
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Research Products
(1 results)