2003 Fiscal Year Annual Research Report
水俣病事件報道のメディアテクストとディスクールにかんする研究
Project/Area Number |
15330104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Siebold University of Nagasaki |
Principal Investigator |
小林 直毅 県立長崎シーボルト大学, 国際情報学部, 助教授 (10249675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 真文 法政大学, 社会学部, 教授 (60229010)
大石 裕 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (40213623)
伊藤 守 早稲田大学, 教育学部, 教授 (30232474)
別府 三奈子 大分県立芸術文化短期大学, 助教授 (20353203)
小林 義寛 日本大学, 法学部, 専任講師 (70328665)
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Keywords | 水俣病事件 / メディア・ディスコース / メディアテクスト / ジャーナリズム / 成長のイデオロギー / 地域社会 |
Research Abstract |
本年度は東京で5回の研究会、熊本・水俣地域で2回の現地聞き取り調査と資料収集、東京で2回の聞き取り調査と資料収集を実施した。この過程では、おもに1961〜1969年の水俣病事件関連の新聞記事(複写)2253点を収集している。 研究会では、(1)水俣病事件報道にみられるディスクールの分析を進めるための理論的枠組みの検討と構築、(2)水俣病事件史の概略と問題点の把握、(3)高度経済成長期における産業政策の把握を中心課題として検討を進めた。 熊本地域では、熊本学園大学教授・原田正純氏のほか、熊本日日新聞社、熊本放送の報道関係者に聞き取り調査をした。この調査の主たる目的は、水俣病事件史の概要を把握し、この事件を、たんなる公害事件としてではなく、戦後日本の高度経済成長期における地域社会、経済産業政策、社会意識、世論、イデオロギー、あるいは医学の取り組み方などの多角的視点から、構造的に再構成することにあった。今回の調査では、所期の最も基本的な目的は概ね達成されたが、なお、報道関係者や社会科学研究者にたいする、今後の聞き取りの必要性が確認された。 水俣地域では、認定患者、胎児性患者とその家族への聞き取り調査を実施した。この調査は、水俣病事件史の最初期とその直前の段階での患者、家族たちの生活状況を把握することと、患者、家族たちにとっての、この事件のメディア報道によって構成される世界の特徴を理解することを目的としていた。今回の調査からは、水俣病患者、家族たちの初期段階での生活が、「漁民の貧しい生活」といったキーワードに関連していくディスクールによって表象されてきたが、そこにはなお、生活の実態の多層的な特徴が潜在させられていることが示唆された。一般には「チッソの企業城下町」などといわれてきたこの地域に特有の空間形態について、その特徴と歴史的変容を把握していくことが、今後の課題として確認された。また、患者とその家族への聞き取りはもとより、この事件にかかわった水俣市民への聞き取りの必要性も確認された。
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