2005 Fiscal Year Annual Research Report
水俣病事件報道のメディアテクストとディスクールにかんする研究
Project/Area Number |
15330104
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Research Institution | Siebold University of Nagasaki |
Principal Investigator |
小林 直毅 県立長崎シーボルト大学, 国際情報学部, 教授 (10249675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 裕 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (40213623)
藤田 真文 法政大学, 社会学部, 教授 (60229010)
小林 義寛 日本大学, 法学部, 助教授 (70328665)
別府 三奈子 日本大学, 法学部, 助教授 (20353203)
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Keywords | 水俣病事件 / メディア言説 / メディア表象 / ジャーナリズム / イデオロギー / 地域社会 |
Research Abstract |
本年度は東京で7回の研究会を開催し、熊本・水俣地域で3回の現地聞き取り調査と資料収集、東京で3回の聞き取り調査と資料収集を実施した。聞き取り調査は、次の二点をねらいとして、それぞれの対象者を選定して実施した。(1)1960年代後半から70年代初頭にかけての水俣病事件をめぐる水俣の地域社会の状況を把握するために、患者とその支援者を対象とした聞き取り調査。(2)水俣病事件に関連したテレビニュースとドキュメンタリー番組の制作過程を解明するために、熊本放送、NHKの関係者を対象とした聞き取り調査。また、水俣病事件にかかわるメディア表象の特性を解明するために、1950年代後半〜70年代前半のテレビのニュース番組、ドキュメンタリー番組などの映像資料を収集した。さらに、聞き取り調査の結果も含め、これらの資料の整理とデータベース化の作業に、研究代表者の指導下にある学生にあたらせた。 研究会での検討をつうじては、1960年代の水俣病事件の新聞報道は、いくつかの重要な出来事を報道しながらも、それらのほとんどが、「見舞金契約」によって水俣病事件が「解決」したとされた後の出来事として、断片的、散発的な報道にとどまっていたこと、また、チッソの労働争議「安定賃金闘争」が水俣地域のもっとも重要な出来事としてのニュース・バリューを与えられていたため、その報道のもとで、水俣病事件にかかわる出来事が潜在化させられていたことなどが明らかになった。さらに、1960年代後半からの水俣病事件史のなかで、患者たちが展開した運動が、それまでの社会運動とは異なる運動の原理を必要としていたこと、そして、そうした運動の展開と、テレビ番組などにみられる水俣をめぐるメディア表象の特性が、緊密な結びつきを形成していたことなどが明らかになった。 平成15年度から3ヶ年にわたって進めてきた本研究の研究成果を研究成果報告書として刷成した。
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