Research Abstract |
本研究の目的は,広場恐怖を伴うパニック障害(以下PD)を対象とした標準的認知行動療法プログラム(以下CBT)の開発を行うとともに,その効果を検証することであった.本研究は,大きく4つの部分からなっている.第1の研究では,PD患者15名(男性5名,女性10名)を対象として行われた治療結果に基づいて,10セッションからなるCBTが作成された.次いで,PD患者12名(男性3名,女性8名)にCBTを実施したところ,CBT後すべての患者に有意な症状の減少が認められた.そこで,第2の研究では,CBTの効果について,PD女性患者16名を対象として,CBTを行わないPD女性患者8名(待機統制群)と比較検討した.その結果,CBTを行った患者では治療後に,不安の低減,重症度の改善等症状の有意な改善が得られた.第3の研究では,PD女性患者34名を対象として,CBTの構成要素であるエクスポージャーと認知の修正について,その実施の有無を比較することによって,治療要素の単独効果について検討を行った.その結果,エクスポージャーは,回避行動と不安の減少,重症度の緩和に有効であり,認知の修正が適切に行われると,不安の減少を促進することが明らかにされた.また,第4の研究では,PD患者12名(男性3名,女性8名)を対象として,CBTの効果を脳内の糖代謝の変化によって確認したところ,CBTは視床下部での糖代謝を減少させ,同時に前頭前野内側部での糖代謝を活性化することが明らかにされ,CBTが脳内のいわゆる恐怖ネットワークの生理学的修正に効果があることが明らかにされた.本研究の結果,PDの諸症状と治療法に関する正しい知識の獲得をねらった心理教育,交感神経機能の亢進を緩和する身体反応の修正,回避行動の修正をねらったエクスポージャー,認知の修正と再発予防に向けた不安管理訓練からなる標準的認知行動療法プログラムが提案された.
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