2004 Fiscal Year Annual Research Report
洋楽導入期から現在に至る異文化適応の歴史的体系的研究-日本人の身体と音感の変遷-
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15330190
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
嶋田 由美 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60249406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村尾 忠廣 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (40024046)
北山 敦康 静岡大学, 教育学部, 助教授 (50153135)
小川 容子 鳥取大学, 地域学部, 助教授 (20283963)
安田 寛 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10182338)
菅 道子 和歌山大学, 教育学部, 助教授 (70314549)
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Keywords | 異文化適応 / SPレコード / 洋楽受容 / 発声 / 音声分析 / ピッチ抽出 / 聴取実験 |
Research Abstract |
本年度は研究の第2年目として初年度の成果を踏まえながら歴史的及び体系的研究グループ合同の研究会を頻繁に企画し、双方の研究成果を公表し合いながら学際的な研究体制で研究を推進した。 歴史的研究グループではこれまでの研究成果から、洋楽の受容過程、とりわけ歌声の獲得の過程に、指導された場所や指導の内容によっていくつかの道筋があったという仮説をたて、文献資料及びSPレコードに残された音源資料の両側面からの検証を行った。その結果、当初は同じように「口を開けて」という文言で開始された歌唱の指導でありながら、ミッションスクールと、東京音楽学校系列で行われていた洋楽の指導の結果としての歌声には明らかに異なる二つの道筋が存在していたことが明らかとなった。 体系的研究グループでは、平成16年度は,平成15年度に引き続き、音声分析機「SUGI Speech Analyzer(V1.0.7.8ANIMO)」及び「CSL(KAY CSL4400)」を用いて、歴史的研究グループによって収集された唱歌集の中から任意の楽曲を抽出し、ピッチ抽出と波形分析をおこなって、先行研究結果との比較分析をおこなった。その結果、これまで指摘されてきた「3度音程」の不安定歌唱(=狭・低現象)の様相が確認され、先行研究のデータの有効性が支持された。しかしこの解釈に関しては、楽曲独自の旋律進行(G-C-D-E)と、歌い手である松井須磨子の「換声点」の不安定さによって説明すべきではないか等の議論があり、仮説の構築に向けて更なる分析をおこなう予定である。併せて、大正期から昭和初期に録音されたSPレコードの中から音源を抽出し、SD法を用いた聴取実験をおこなった。大学生を対象とした聴取実験の結果からは、歴史的研究グループが提出した「東京音楽学校系発声:雅楽の伶人による指導」と「ミッション系発声:宣教師による指導」の違いがとらえられ、仮説を支持する結果が得られた。
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Research Products
(4 results)