Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞鍋 昭治郎 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20028260)
杉本 充 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60196756)
満渕 俊樹 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80116102)
今野 一宏 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10186869)
渡部 隆夫 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30201198)
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Research Abstract |
本研究の目的は,Hilbert空間H上の状態空間S(H)に作用する量子通信路Γ:S(H)→S(H)が,有限次元パラメタθによりΓ=Γ_θと滑らかにパラメトライズされているという仮定の下で,非可換統計学および量子情報幾何学の手法を用い,拡大通信路(id【cross product】Γ_θ)^<【cross product】n>の量子状態空間S(H^<【cross product】2n>)への埋め込み方法の最適化,および対応する量子統計的モデルに対する推定量の最適化理論およびその漸近論を研究することにある.本年度の主な研究成果は以下の通りである. (1)一般化Pauli通信路:S(C^2)上のPauli通信路は,量子情報理論の諸分野で一つの標準的通信路として確立された,物理的・工学的に重要な通信路のクラスである.この意味で,Pauli通信路の推定問題を研究することは,本研究の計画段階からの重要課題の一つであったが,本年度の研究において,S(C^2)上のPauli通信路のみならず,これをさらに一般化したS(C^d)上の一般化Pauli通信路の推定問題に対する完全な解決をみることができた.まず,拡大次数n=1に対しては,最大エンタングルド状態を入力とした時かつその時に限り出力状態族の量子Fisher計量が最大となる埋め込みが実現されること,および,モデルのパラメタが∇^mアファインである時かつその時に限り有効推定量が存在することを証明した.この定理の背景には,一般化Pauli通信路の集合が,上記埋め込みを介してd^2-1次元確率単体と情報幾何学的に同一視できるという事実が有効に機能している.本研究ではさらに,任意の拡大次数nに対し,n=1の推定方式のiid拡張が統計学的に最適であることも証明した. (2)∇^e-自己平行量子通信路:量子情報理論で頻繁に用いられるdepolarizing通信路,bit flip通信路,phase flip通信路,bit-phase flip通信路などの通信路は,S(C^2)上のPauli通信路の部分モデルとみなせるが,上述の最適化された埋め込みにより,これらはいずれも3次元確率単体P^3の∇^e-自己平行な統計多様体と同一視できることを証明した.また,この事実を(1)の結果と結び付けることにより,これらの通信路に対する最適推定方式も統一的に議論できることを明らかにした.さらに,S(C^d)上の一般化Pauli通信路の部分モデルの推定問題も研究し,一般次元depolarizing通信路を含む∇^e-自己平行量子通信路の概念を導入し,その推定理論を統一的に展開することに成功した.この結果は,良く知られた未解決問題の一つに対する完全な回答を与えるものである.
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