2004 Fiscal Year Annual Research Report
陽子対スピン相関測定によるEPRパラドックスの検証
Project/Area Number |
15340071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 英行 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90030030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢向 謙太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50361572)
川畑 貴裕 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80359645)
佐川 弘幸 会津大学, 総合数理科学センター, 教授 (50178589)
佐藤 義輝 東京工業大学, 理工学研究科, 助手 (00359689)
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Keywords | EPRパラドックス / アインシュタイン / ベルの不等式 / スピン一重状態 / スピン相関偏極度計 |
Research Abstract |
量子力学の完全性についてアインシュタインらによって投げかけられたEPRパラドックスを、1964年にJ.S.ベルによって定式化された不等式(ベルの不等式と呼ばれている)の破れを実験的に測定することで、解決を目指すのが本研究の最終目標である。そのためには、(1)1SO状態の生成、(2)崩壊粒子のスピン相関測定が必要であるが、従来これらを実験的に実現することができなかった。我々は、1H(d,2He)核反応により2陽子系の高純度1重状態[1SO]を生成し、高エネルギーにブーストされた崩壊2陽子のスピン相関を測定する極度計EPOLを開発することで、このEPRパラドックスの解決をめざす。 昨年度までに、スピン相関偏極度計EPOLを完成させ、磁気スペクトロメータの焦点面に設置した。EPOLは、前段多芯線ドリフトチェンバーとプラスチックシンチレータホドスコープによる陽子対の飛跡解析部、炭素ブロックによるスピン偏極分析標的、後段多芯線ドリフトチェンバーとプラスチックシンチレータホドスコープによる散乱陽子対の飛跡解析部の3部分で構成されている。このEPOLにより2003年10月に実験を遂行した。約70万個のEPRペアーのデータを収集することができた。これに先立ち偏極度計EPOLの有効偏極分析能を陽子エネルギー110-150MeVの範囲について実験的に較正した。 現在データは解析中であるが、予備的な結果によれば、ベルの不等式は2.9σの標準偏差で破れていることが明らかになった。これは99.6%の有意度でEPRの主張が否定されることに相当する。この解析にあたり、偏極度計の検出効率の非一様性を消去する「対角平均法」を発明した。現在投稿論文を準備中である。 このように本年度の研究は極めて順調に進展した。
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