2004 Fiscal Year Annual Research Report
核媒質中でのベクトル中間子の分散関係の導出とカイラル対称性回復現象の研究
Project/Area Number |
15340089
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
延與 秀人 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 主任研究員 (30213606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四日市 悟 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 協力研究員 (20360670)
武藤 亮太郎 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (50392147)
大谷 宗久 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 協力研究員 (70373280)
小沢 恭一郎 国立大学法人東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (20323496)
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Keywords | φ粒子 / カイラルシンメトリー / 核物質 / 媒質効果 / 不変質量分布 / 電子陽電子対 |
Research Abstract |
質量をほとんど持たないカレントクォークは「カイラル対称性の自発的破れ」により有効質量を得てバレンスクォークになる。この破れの程度をあらわす量が真空のクォーク凝縮<q^^-q>である。<q^^-q>は真空で、ある有限値をとっているが、高密度、高温度状態ではその値が減少し、ある臨界値でゼロになると理論的に予想される。すなわちカイラル対称性の破れが回復するわけである。 本研究はベクトル中間子を原子核ターゲットで生成し、その電子陽電子崩壊を捕らえることにより、原子核密度下でこの現象を捉えることを目的としている。当該実験は中間子の電子対崩壊、K中間子対崩壊測を測定することが可能であり、かつ重心系後方をカバーして、核内崩壊する中間子の検出効率を上げている。平成10年度より本格的なデータ収集に入り平成14年3月をもち、データ収集を終えた。平成13年の5月に実験初期のデータの解析を完了し、核内ρ/ωメソンが質量変化を起こしていることの実験的証拠をPhysical Review Letterに報告した。 今年度は全データの解析を進めた。公表されているデータの約100倍の統計をもって、観測された質量変化を再確認し、理論モデルに基づいた解析を行い、マスシフト量の定量的評価を行った。この成果は今年度国内外の学会で報告した。年度内に最終結果を論文としてサブミットする。この高統計のデータの公表は関連分野から待ち望まれているものである。また、φ中間子の電子対崩壊の解析をすすめ、同様な質量変化があることを示す予備的な結果を得、国際会議等で発表した。以上の観測事実を合わせると、ベクターメソン特有の質量変化があることはほぼ確かになったといえる。最終年度ではφの質量変化とρ/ωの質量変化に対する分散関係を与えることができるであろう。 研究は当初予定通りに進めた。研究の遂行上の問題はなく、今年度の目標を達成した。
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Research Products
(3 results)