2005 Fiscal Year Annual Research Report
核媒質中でのベクトル中間子の分散関係の導出とカイラル対称性回復現象の研究
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15340089
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Research Institution | RIKEN |
Principal Investigator |
延與 秀人 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 主任研究員 (30213606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四日市 悟 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 協力研究員 (20360670)
武藤 亮太郎 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (50392147)
大谷 宗久 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 協力研究員 (70373280)
成木 恵 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (00415259)
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Keywords | φ粒子 / カイラルシンメトリー / 核物質 / 媒質効果 / 不変質量分布 / 電子陽電子対 |
Research Abstract |
質量をほとんど持たないカレントクォークは「カイラル対称性の自発的破れ」により有効質量を得てバレンスクォークになる。高密度、高温度状態ではカイラル対称性の破れが回復し、クォークの質量が変化することが予言されている。 本研究はベクトル中間子を原子核ターゲットで生成し、その電子陽電子崩壊を捕らえることにより、原子核密度下でこの現象を捉えることを目的とした。平成10年度より本格的なデータ収集に入り平成14年3月をもち、データ収集を終えた。平成13年の5月に実験初期のデータの解析を完了し、核内ρ/ωメソンが質量変化を起こしていることの実験的証拠をPhysical Review Letterに報告した。 本科研費の期間における研究では取得した全データの解析を進めた。最終的に3本の査読つき論文を投稿し(内1報は受理済み)あと1報が投稿準備中である。来年度、本論文を仕上げ、本実験は終結する事となる。 本研究で実験的に証明された事実は、1)ρωφという3種類のベクター中間子は核密度有限物質内で質量変化を起こしている。2)その変化量はQCD和則による理論予想とよく一致している。という2点に集約される。この実験結果とカイラル対称性の回復現象との関連については理論を含めた今後の議論を待つものであるが、本実験結果のもたらしたインパクトは甚大であるといえよう。 他に、3)12GeV陽子・原子核反応ではω中間子とφ中間子の生成機構が異なり、原子数依存性が異なることを見出し、4)核内でKK崩壊率とee崩壊率が異なる可能性は本実験での精度の範囲内では否定された。又、本実験のために建設したスペクトロメーターに関わる幾つかの測定器開発(疎水性エアロジェル、コンパクトガスチェレンコフ検出器、ガスチェンバー用セラミックエンドプレート)も評価されるべきであろう。
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Research Products
(1 results)