2005 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子ドット微小光共振器におけるコヒーレント高密度励起状態の研究
Project/Area Number |
15340100
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
栗巣 普揮 山口大学, 工学部, 助教授 (00253170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 満 山口大学, 工学部, 教授 (60091211)
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Keywords | 微小光共振器 / 半導体量子ドット / 共振器ポラリトン / 振動子強度 |
Research Abstract |
本研究では、物質の電子系と光との強結合系において、コヒーレントな相互作用を増強させることで、超放射のような新たな物理現象を発現させることを目指している。このために、光活性物質として大きな振動子強度を持つ半導体量子ドット(CuCl量子ドット)と、電子系と光とを強く結合させるために微小光共振器構造に着目した。今年度は、共振器構造を形成する誘電体多層膜ミラーについて改善を図り、これを用いた量子ドット微小光共振器において、その基礎的光学特性である共振器ポラリトンとその発光特性について調べた。 実験結果として、量子ドット微小光共振器において、170meVという極めて大きなモード分裂幅を持つ共振器ポラリトンが観測された。このモード分裂の値は、典型的なGaAs量子井戸を活性物質とする共振器において観測されている共振器ポラリトンのモード分裂幅(5〜9meV)の約20倍にも達していることがわかった。この共振器ポラリトンの結果について誘電体多層膜の光伝播に対しては古典的電磁気理論に基づき、活性物質の励起子に対してはローレンツモデルを用いて半古典的な解析を行った。解析の結果、共振器中のCuCl量子ドットの励起子振動子強度は、共振器が無い通常の量子ドットのそれと比較して、40倍程度も増大されているという結果になった。このような異常な振動子の増大は、これまでに共振器で予測されている遷移確率の増大(1次元の共振器では最大約2倍の遷移確率の増強が予測されている。)では、説明ができず、コヒーレントな励起子集団が引き起こす超放射現象の一端を捉えているものと解釈せざるを得ないと考えられる。 発光特性を調べた結果、(1)自由励起子発光では、共振器に特有の明瞭な放射角度依存性が観測された。また、発光の励起密度依存性において、自由励起子発光及び励起子分子発光において励起密度に対し超線形な発光の増大が観測された。これは、共振器中の励起子が位相を揃えた状態となり、これらの励起子たちの協同現象として超放射的に発光していることに起因していると考えられる。 これら、微小光共振器を製作するための真空装置として、チタン合金製の超高真空薄膜形成装置を開発し、その真空特性が極めて優れていることも実証した。
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Research Products
(2 results)