2004 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロチップカロリーメーターによるドープ型有機超伝導体の極低温熱異常の検出
Project/Area Number |
15340116
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中澤 康浩 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60222163)
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Keywords | 熱容量 / 超伝導 / 電子熱容量係数 / インコメンシュレート |
Research Abstract |
本研究では、ドナー層とアニオン層の構造が、インココメンシュレートな関係になるため、定比組成からずれた有機電荷移動塩超伝導体微少量結晶に対して、定量的な熱容量測定を行い電子状態、超伝導の特異性を明らかにすることを目的としている。平成16年度は、前年度にセットアップした微小測温素子チップを用いたセルを用いてた測定を15年度に導入した強磁場磁石中で使用可能にし、磁場下での測定を中心に行った。1K以下の超低温領域で最大15Tまでの測定が可能になっている。 これらの装置を用いて、本年度は(MDT-TTF)(AuI_2)_<0.436>(T_c=4.3K)のゼロ磁場、磁場下での測定の試料依存性などを吟味し転移のブロード化が本質的にインコメンシュレート性に起因していることを確認することからスタートした。また、高い超伝導転移温度を与えることで知られるκ型の構造をもつBEDT-TTF塩の一つであるκ-(BEDT-TTF)_4Hg_<2.89>Br_8に対して磁場中の熱容量の測定を行った。その結果、超低温において以下の点が明らかになった。(1)アニオン中にあるHg鎖による格子熱容量の次元クロスオーバー現象が約2K程度でおこる。(2)反強磁性的なスピンの揺らぎによる電子熱容量係数γが通常のκ型塩の倍程度まで増幅する。(3)インコメンシュレートなアニオン部の静電ポテンシャルによるドナー層の電子がつくるFermi面の折りたたみ効果が生じ、それによって超伝導転移が本質的なブロード化する。(4)超伝導転移に基づく熱異常が、バルクの性質として顕著な冷却速度依存性を示す。この中で、(2)-(4)の性質は、1/2フィリングの充填度をもつ強相関電子系ならではの特徴的な性質であり、有機超伝導体の新しい側面を示している。
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Research Products
(6 results)