2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15340124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
井上 克也 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (40265731)
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Keywords | キラル磁性体 / 透明磁性体 / 分子性磁性体 / 光学活性錯体 / 分子フェリ磁性体 / 不斉磁気二色性 / 磁場応答非線形光学効果 / 不斉磁気構造 |
Research Abstract |
キラル磁性体は、光学活性と磁気光学効果を併せ持つ結晶で、多くの新規磁気光学効果が期待されている。我々は既に幾つかのキラル磁性体の構築に成功しているが、本研究計画ではより高温の転移温度を持つキラル磁性体の構築研究を進めた。高温のキラル磁性体の構築には、1)磁気相互作用を強くする、2)磁気構造次元性の向上が必要である。我々は今までキラル磁性体を二元金属をスピン源とするCN架橋錯体(プルシアンブルー型錯体)にキラル有機配位子を導入し、その配位子の不斉誘導を用いて行ってきた。この場合、転移温度向上の条件の1)については、遷移金属イオンの磁気軌道の対称性の問題になる。本年度はより磁気軌道が直交するCr^<2+>、Ni^<2+>、V^<2+>を用いて研究を進めた。その結果、V^<2+>を用いた場合、錯体が粉末として得られたが、他のイオンに関しては、合成条件が厳しく錯体の合成には至っていない。高温化の条件2)に対しては、既に得られている二次元のキラル磁性体([Cr(CN)_6][Mn((S)-pn)H_2O]H_2O)について検討した。この錯体では、CrイオンとMnイオンがCN架橋を使って二次元に広がっている。またCrイオンの平面に垂直な配位サイトには、配位していないCN基が存在し、Mnイオンの平面に垂直な配位サイトには水が配位している。従ってMnイオンに配位している水を取り除けばMnとCrの間にCN架橋する可能性があると考え、この二次元錯体の脱水を試みたところ、全ての水が340K,真空中で取り除かれ、三次元磁性体がえられた。この脱水変化は、幸運なことに単結晶の状態で可逆的に起こり、結晶構造を明らかにすることができた。その結果、脱水された錯体は、予想通り三次元構造を持っており、キラル空間群を保ったまま転移温度は73Kに向上した。この転移温度は、構造が明らかな分子磁性体としても最高の転移温度を有する。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Katsuya Inoue, et al.: "Structure and Magnetic Properties of a Chiral Two-dimensional ferrimagnet with TC of 38"Angew.Chem.Int.Ed.. 42. 4810-4813 (2003)
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[Publications] Kumagai H, et al.: "Hydrothermal synthesis, crystal structure and characterization of a new hexanuclear cobalt(II) complex comprised of octahedral and tetrahedral cobalt ions"Polyhedron. 22. 1917-1920 (2003)
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[Publications] C.D.Smith, et al.: "Synthesis and properties of Mn(hfac)_2 complexes of isoindoline nitroxide radicals"Synth.Met.. 138. 501-506 (2003)
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[Publications] N.V.Baranov, et al.: "Spin fluctuations in Gd3Rh induced by f-d exchange : the influence on the T-linear specific heat"J.Phys.Condensed Matter. 15. 531-538 (2003)
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[Publications] Imai H, et al.: "A novel two-dimensional chiral complex ; [Cu-II(R)-pn]_2 [Ni-II(CN)_4]_2-H_2O((R)-pn = (R)-1,2-Diaminopropane)"Synth.Met.. 137. 919-920 (2003)
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[Publications] Hosokoshi Y, et al.: "Magnetic properties on an organic ferrimagnetic compound and related materials"Synth.Met.. 133. 527-530 (2003)
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[Publications] K.Inoue, et al.: "Magnetism : Molecules to Materials V Molecule-Based Materials"J.S.Miller & M.Drillon Eds, Wiley-VCH. 30 (2004)