2005 Fiscal Year Annual Research Report
反水素生成計画を支援する反陽子ダイナミクスの理論研究
Project/Area Number |
15340127
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸嶋 信幸 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (10134488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野 健一 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教授 (90228742)
崎本 一博 宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究本部, 助手 (60170627)
五十嵐 明則 宮崎大学, 工学部, 助教授 (90300855)
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Keywords | 反陽子 / 反水素 / 共鳴散乱 / 相対論的効果 |
Research Abstract |
1)衝突径数法を用いて反陽子と水素分子イオンの衝突による電離断面積を計算した。イオン衝突で反陽子水素原子にs状態が混ざること(I-mixing)による反陽子・陽子消滅過程を調べた。反陽子と水素原子衝突での反陽子水素原子生成過程を理論的に完全に理解するために、また、陽電子と反陽子水素原子衝突での反水素原子生成を調べるため、電子(陽電子)と反陽子水素原子衝突の波束伝搬による量子力学的計算を行った。反陽子とヘリウムイオン衝突による反陽子捕獲断面積の波束伝搬による量子力学的計算を行った。この衝突系では共鳴散乱が重要であることがわかった。 2)多電子原子系の顕著な特徴であるFano共鳴は、低次元半導体における励起子系でも発現する。ここで静電場(F_0とする)下の半導体超格子(WSL)における励起子Fanoスペクトルを理論的に解析した。F_0が大きくなるに従い、超格子のミニバンド間のZener結合が支配的になり、スペクトル形状に特異な変調が現れた。特に、低エネルギー領域では吸収端の赤方遷移が、高エネルギー領域では不規則な形状の変化が見られた。 3)反陽子と水素原子の衝突過程に超球座標緊密結合法を適用した。原子基底による緊密結合法と、プロトニウム生成断面積についてほぼ同様な結果が得られた。反水素の精密分光は反陽子科学の主要な課題であるが、高次補正を扱う上で、水素原子のDirac方程式の完全系が必要になる。その解析解は知られているが、離散的な擬完全系を使うとその計算はずっと容易になる。Dirac方程式は負のエネルギーの存在のために一般には変分原理は成り立たず、不用意な変分計算を行うと非物理的な状態(spurious states)がたくさん出てくる。今回の研究では、Dirac方程式の変分計算の処方箋として、適当な境界条件と変分基底の組により、きれいな擬完全系が作れることを、数値計算の例をもって示すことができた。
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Research Products
(4 results)