2006 Fiscal Year Annual Research Report
反水素生成計画を支援する反陽子ダイナミクスの理論研究
Project/Area Number |
15340127
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸嶋 信幸 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (10134488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野 健一 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (90228742)
トン ショウミン 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 講師 (80422210)
五十嵐 明則 宮崎大学, 工学部, 助教授 (90300855)
崎本 一博 宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究本部, 助手 (60170627)
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Keywords | 反陽子 / 反水素 / 陽電子 / 原子衝突 / プロトニウム |
Research Abstract |
長年の懸案課題であった、反陽子が水素原子に捕獲された後の精密な分布を与える断面積の計算に世界で初めて成功した。この過程を扱うには、従来の精密手法である緊密結合法ではチャンネル数が数万を超えるため現実的な時間内では不可能であり、波束を用いた直接解法で総和である全断面積が求められていたが終状態の詳細な分布は全く不明であった。本研究で開発した手法では、Chew-Goldebergerの積分表示式から出発して、グリーン関数の持つ空間境界条件を因果律に焼き直し、時間発展方程式に書き換えてから直接解法を用いることにより、単一エネルギーの精密解を求めることができる。この手法を用いて、負ミューオンの水素原子による捕獲、反陽子のヘリウム原子による捕獲の詳細な部分断面積を計算することにも成功した。また、組み替えを伴う任意のヤコビ座標系への拡張にも成功し、低エネルギー散乱の革新的手法として大きな発展をもたらした。 また、反陽子とヘリウムイオン衝突を時間に依存した波束伝搬による量子力学的手法で調べた。そしてこの系では共鳴が非常に重要であることがわかった。しかし、この手法では、共鳴で平均した物理量しか求めることができなかった。そこで、共鳴構造を詳しく調べるために、新たにR行列法と直接数値解法を合わせた手法を開発し、電子と反陽子ヘリウムイオン、反陽子とヘリウムイオンの衝突を調べることに成功した。特に前者の衝突過程での共鳴はASACUSAグループの高分解能レーザー分光実験で観測されたのと同じものであり、本研究では衝突の立場からこの共鳴状態を詳しく調べることに成功した。 いくつかの共鳴が重なったエネルギー領域の共鳴状態の解析において、時間遅れ行列を利用することで、共鳴構造が把握でき、あいまいなく共鳴解析ができることをヘリウムとポジトロニウム負イオン系において示した。
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Research Products
(21 results)