2005 Fiscal Year Annual Research Report
海岸線自動後退理論を基礎とする河川デルタ堆積系の実験オート層序学
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15340171
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
武藤 鉄司 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (70212248)
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Keywords | オート層序学 / シークウェンス層序学 / 河川デルタ / 平衡河川 / 海水準変動 / 海岸線自動後退理論 / 水槽実験 / 自己組織的 |
Research Abstract |
本研究の目的は、河川デルタ堆積系のオート層序学(autostratigraphy)を確立することである。4ヶ年計画の3年目にあたる平成17年度は、平成16年度に引き続き、オート層序学の基礎に関わる重要な問題であった平衡河川の実現条件についての理論的モデルを誌上で提唱するとともに、その検証実験を多数回実行した。この理論は、(1)平衡河川の出現が海水準下降期に限られること、(2)平衡河川の実現を許す海水準下降パターンはデルタのジオメトリと堆積盆の地形によって大幅に変わりうること、を述べている。検証実験はこれらの予想を裏付ける結果を与えた。一連の検討で明らかになった知見は以下のように要約される。 平衡河川には、堆積盆の動的条件が特定パターンに沿って時間的に変わる非定常的フォーシングのもとでのみ実現可能なものと、動的条件がまったく変わらない定常的フォーシングのもとで必然的に実現するオートジェニックなものとがある。後者は、急激な海水準上昇によって沈水した旧沖積堆積系の上を、次の海水準下降期に新しい河川デルタが前進していく際に容易に実現できる。これに比べて、前者の実現は一般的には非常に難しい。したがって、地層記録に保存される平衡河川の多くはオートジェニックと考えてよい。また、デルタがダウンラップする海底斜面の勾配が沖積河川の勾配よりも小さい地形条件のもとでは平衡河川は実現せず、海水準がどのような速度で低下しても河川は埋積傾向を永続させることができる。この場合、沖積河川の下流端はある時点で海岸線から乖離してしまい、堆積系の非デルタ化(沖積扇状地化)が起こる。海水準低下速度の大きさは海岸線の乖離に要する時間とそのときの堆積系のサイズを決めるだけで、乖離の実現の可否そのものには影響を及ぼさない。
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Research Products
(6 results)