Research Abstract |
白金族元素は地球化学的には親鉄元素に分類され,地球のような分化した惑星ではそのほとんどが中心部に存在する殻の部分に濃集される.従って,核を取り囲むマントルや地殻における白金族元素の濃度は非常に低く,その定量には感度の高い分析法が必要となる.本研究では誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)法を用い,分化した隕石を中心とした試料中の微量白金族元素存在度を正確に求め,それらの隕石の形成や分化の過程を考察することを目的とする.本年度は研究の2年目に当たり,昨年度より継続して行った分析法の整備が一段落して,研究目的を実施するための環境が整った.その上で,研究課題にある分化した隕石の分析を実施した.本年度対象にした隕石は隕石の分類上ユークライトに属するもので,その中から,これまでの研究で特異的に金属相が多く含まれていると報告されている隕石を選び,その白金族元素含有量をICP-MS法で求めた.元素分析には同方法以外に,各種放射化分析法により主成分,微量成分元素を定量し,併せて,各種顕微鏡を用いて鉱物学的観察もおこなった.研究に用いたユークライトは南極大陸で発見・回収された6隕石(EET 92023,ALHA 76005,LEW 87026,GRO 95633,EET 92003,LEW 85300)で,走査電子顕微鏡観察によると,いずれの隕石においても鉄ニッケル合金鉱物(テーナイト,カマサイト)の存在が確認された.各試料中の白金族元素存在度を正確に求め,その組成と類似する組成をもつ隕石グループとして,2種類の鉄隕石(IAB, IIIAB)と1種類の石鉄隕石(パラサイト)が選び出された.恐らく,ユークライト母天体が火成活動により分化がおこり,それが終了した後でこれた隕石がその母天体上に落下したことによる混入であろうと結論した.
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