2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15350006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 敬 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10164211)
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Keywords | 気相負イオン反応 / ディストニック負イオン / ラジカル付加反応 / 水クラスター表面 |
Research Abstract |
本研究は,気相の分子集合体(分子クラスター)が電子をトラップする性質や,柔らかい構造によって容易に分子を取り込む性質をもつことを利用し,分子クラスターをミクロなフラスコとして用いる新規な気相負イオン反応を開発することを目的としている.本年度は以下の研究を行った. 1.水クラスター表面を利用した負イオン反応の開拓:水クラスター表面に・CO_2^-ラジカル負イオンを固定した気相反応試薬・CO_2^-(H_2O)_nを調整し,その反応性を調べた.ビーム中で生成したイオン種[CO_2(H_2O)_n]^-の電子構造を負イオン光電子分光によって調べ,ラジカル点と電荷が空間的に離れたディストニックなイオン種を含む・CO_2^-(H_2O)_n構造が実現していることを確認した.さらに,・CO_2^-(H_2O)_nをCH_3Iと反応させるとラジカル付加反応によって炭素-炭素結合が生成することを,質量分析法とレーザー光解離法とを組み合わせて明らかにした.これにより,(H_2O)_n表面に固定・安定化させたディストニック負イオンを反応に用いるプロトタイプ的な反応経路を示した. 2.ab initio計算による・CO_2^-(H_2O)_nの評価:高精度のab initio計算によって,前項の反応試剤・CO_2^-(H_2O)_nの幾何構造・電子構造を推定した.これにより,ディストニックイオンが局在した電荷分布によって(H_2O)_n表面に固定され,溶媒和されていないラジカル点が反応性に寄与するという,水クラスター表面に固定・安定化した負イオン反応試剤の特性を明らかにした. 3.反応装置の改良:衝突反応ビーム装置を以下のように改良した.(1)クラスターのビーム強度を高め,分子の取り込み効率を上げるために,クラスター源を改良した.(2)イオン検出感度を高めるために計数法を採用した.(3)光電子分光計を改良しエネルギー分解能を高めた.
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Research Products
(1 results)