2005 Fiscal Year Annual Research Report
大規模分子系の精密電子状態理論の開発とインターフェース系への応用
Project/Area Number |
15350007
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中野 晴之 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90251363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 祥弘 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (20315055)
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Keywords | 電子状態理論 / 大規模系 / 電子相関問題 / インターフェース系 / 相対論的効果 / 多配置摂動論 / 励起スペクトル / 光分解反応 |
Research Abstract |
本研究は、大規模系の精密電子状態理論の開発とそのプログラムパッケージの開発を行い、大規模系として特に、比較的小さな分子部分と環境を与える大きなバックグラウンド部分からなるインターフェース系に焦点を絞り、これまで精度良く扱うことの難しかった非経験的分子軌道計算を現実のものとすることを目的とした。本年度は、昨年度までの成果をもとに、これまで開発してきた理論的手法の実際の系への適用を行った。以下に主なものを記す。 1.遷移金属アクア錯体の励起スペクトル インターフェース系のひとつとして、水溶液中の遷移金属錯体の励起スペクトルを求めた。溶液中の電子状態を求める手法であるRISM-SCF法と昨年度までに開発した多配置摂動論GMC-QDPT法とを結びつけることにより、TiからCuまでの第一遷移金属六配位アクア錯体のd-d遷移を計算し、良い精度で実験のスペクトルを再現した。d-d遷移においては溶媒効果が小さく、孤立相の六配位錯体を用いても十分な結果が得られることを明らかにした。 2.ジケトンの光分解反応の解明 トルエン溶液中でのジケトンの光分解反応により、有機半導体の材料として有用なペンタセンが得られるという実験が報告されている。これらジケトンの光分解の反応機構を明らかにするために、励起状態のポテンシャル曲面、IRCおよび動力学計算から反応経路の解析を行った。その結果、ジケトンの光分解の反応経路には、1B1状態(HOMO-2nd LUMO励起)を経るもの、1B2状態(HOMO-LUMO励起)を経るものの二種があることを明らかにした。 3.第6周期金属を含む錯体の電子スペクトル 昨年度開発した相対論的多配置摂動論を用い、相対論効果と電子相関効果の両方を高度に要するPt原子を含む平面四角形錯体のd-d遷移スペクトルを求めた。その結果、誤差0.1〜0.3eV程度の良い精度で実験値を同定することができた。
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Research Products
(7 results)