2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15350008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 寛 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80302800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
雨宮 健太 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80313196)
太田 俊明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80011675)
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Keywords | 定在波法 / 極端軟X線 / 有機薄膜 / 液晶 / 構造解析 |
Research Abstract |
本課題は、波長が20Å以上の極端軟X線をプローブとして、超格子基板の上に形成した有機薄膜の基板垂直方向の位置情報を定在波法によって調べる手法の開発を行い、液晶などの実際の有機薄膜の構造研究へ応用することを目的としている。本手法では、定在波に対する特定原子の位置位相情報をその原子からのX線光電子を検出することによって行うことに特徴がある。今年度は、本課題の初年度なので、極端軟X線と超格子による定在波発生の確認と、光電子検出による定在波プロファイルの測定と解析を行い、本手法の立ち上げと構造解析手法としての能力の検証を主に行った。 定在波発生用超格子基板としては、交互蒸着法で作成されたW/C超格子(d=30.9Å)を用い、その表面にアゾベンゼンを含む長鎖カルボン酸カドミウムの単分子膜をLB法によって作成したものを試料とした。この超格子による定在波を全電子収量によって調べたところ、Bragg条件(hν=650eV,θ=19.7°)を満たすX線エネルギー領域に約50eV幅の明確な定在波プロファイルが観測されたので、極端軟X線領域の定在波を人工超格子基板によって問題なく発生させられることを確認できた。さらにこの定在波によって単分子膜中の窒素原子とカドミウム原子を励起して得られる光電子を電子エネルギー分析器で検出し、X線のエネルギーを掃引したところ、それぞれの原子の定在波プロファイルが得られた。このプロファイルを理論式で解析して、それぞれの原子の基板垂直方向の高さを求めたところ、カドミウム原子が分子/基板界面に位置するのに対し、窒素原子はそこから7±1Å高いところに位置することが分かった。このように、本手法により膜中の特定の原子の高さを約1Åの精度で求められることが明らかになった。
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