2004 Fiscal Year Annual Research Report
内殻励起を利用したスピン禁制イオン化・励起状態の研究
Project/Area Number |
15350017
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
小杉 信博 分子科学研究所, 極端紫外光科学研究系, 教授 (20153546)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
繁政 英治 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助教授 (90226118)
初井 宇記 分子科学研究所, 極端紫外光科学研究系, 助手 (40332176)
樋山 みやび 分子科学研究所, 極端紫外光科学研究系, 助手
|
Keywords | 軟X線発光分光 / 共鳴ラマン散乱 / 共鳴光電子分光 |
Research Abstract |
内殻励起状態を中間状態とした場合、共鳴軟X線光電子スペクトルや共鳴軟X線発光スペクトルを測定すると、スピン禁制状態の情報を得ることができる。本研究では、3年間の研究期間の間に、共鳴光電子放出によってスピン禁制な価電子イオン化状態、共鳴軟X線発光によってスピン禁制な価電子励起状態をそれぞれ解明することを目的としている。 平成16年度は、共鳴中間状態である、内殻励起状態について温度依存性をAr固体について発見するなど、基礎的な知見を得ることができた。さらにR-Matrix/MQDT法による精緻な理論的手法の開発をおこない、従来困難であった共鳴状態の統一的な記述が可能になった。このような基盤に立って、共鳴光電子分光を利用してDNAの電子状態の議論をおこない、電気伝導機構を議論することができた。また、共鳴軟X線発光に関して装置開発をおこなった。これは新しい概念にもとづく軟X線発光分光器で、開発が必要な光学素子として、超高真空用高精度小型スリット、Wolter鏡、透過型回折格子、CCD検出器がある。このうち平成15年度に開発が終了したWolter鏡とCCD検出器を除く光学素子について開発を行った。超高真空用高精度小型スリットはフィードバック制御とピエゾ素子・弾性ヒンジ機構を採用することで、目的の性能が達成できた。透過型型回折格子については、溝本数6250本/mmのものを製作した。さらに、真空槽とアライメントのための精密駆動装置を開発し、システムとして動作するところまで立ち上げを行った。実際の軟X線で分光器全体の性能を評価したところ、エネルギー分解能が少なくとも1500であることがわかった。これは現在の世界的な水準と同程度といえる。最終年度の来年度に発光分光器側にもスリットを導入しさらに高分解能を達成し、実際にスピン禁制励起状態の研究に利用できる準備が整った。
|