2004 Fiscal Year Annual Research Report
環境調和型遷移金属錯体触媒を用いる極性小分子の高効率活性化
Project/Area Number |
15350055
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 輝幸 京都大学, 工学研究科, 助教授 (20211914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光藤 武明 京都大学, 工学研究科, 教授 (90026344)
和田 健司 京都大学, 工学研究科, 講師 (10243049)
浦 康之 京都大学, 工学研究科, 助手 (40335196)
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Keywords | 環境調和型触媒 / ルテニウム錯体触媒 / [4+2]付加環化反応 / Diels-Alder反応 / シクロブテノン / 炭素-炭素結合切断 / フェノール / オキソシクロヘキサジエニル |
Research Abstract |
本研究では、ルテニウム錯体の高いヘテロ原子親和性を利用し、ルテニウム錯体触媒に特徴的な極性小分子の高効率活性化を行い、不飽和炭化水素への触媒的かつ高選択的ヘテロ原子官能基導入新手法を開発することを目的とする。同時に、副生成物を一切排出しない環境調和型新規ルテニウム錯体触媒となり得る低原子価ルテニウム錯体群を創製する。 1.ルテニウム錯体触媒をもちいるアルキンとアルケンとの原子効率的新規[4+2]付加環化反応の開発 Ru(η^6-cot)(dmfm)_2(1)[cot=1,3,5-cyclooclatriene, dmfm=dimethyl fumarate]錯体が3-ヘキシン等の内部アルキンとフマル酸ジメチル等に代表される電子不足アルケンとの原子効果的新規[4+2]付加環化反応に高い触媒活性を示し、対応する3.6-ジアルキル-4-シクロヘキセン-1.2-ジカルボン酸エステルが良好な収率で得られることを見出した。本反応は、低原子価ルテニウム錯体触媒によるアルキンからジエンへの高選択的異性化反応、および生成したジエンと電子不足アルケンとのDiels-Alder反応という2段階反応により進行している可能性を明らかにした。 2.ルテニウムおよびロジウム錯体触媒を用いるシクロブテノン類の新規炭素-炭素結合切断/炭素骨格再構築反応の開発 我々はこれまで、ルテニウム錯体触媒を用いる高選択的炭素-炭素結合切断/炭素骨格再構築反応の開発を行ってきた。本研究では、ルテニウムあるいはロジウム錯体触媒を用いるシクロブテノン類の炭素-炭素結合切断を経る新規合成反応を開発することを目的として種々検討を行った。その結果、シクロブテノン類の開環二量化反応による2-ピラノン誘導体、シクロブテノン類と2-ノルボルネン類との脱カルボニル化カップリング反応による双環シクロペンテン誘導体、さらに直接開環カップリング反応による双環シクロヘキセノン誘導体の新規触媒的高効率合成法の開発に成功した。 3.環境調和型新規低原子価ルテニウム錯体の創製、および新規2価ルテニウムフェノラート錯体の合成 我々が初めて合成したRu(η^6-cot)(dmfm)_2(1)錯体とフェノールとの反応を錯体レベルで詳細に検討し、反応温度110℃ではη^5-シクロオクタジエニル配位子を有する新規2価ルテニウムフェノラート錯体(2、Ru(η^5-C_8H_<11>)(η^5-C_6H_5O))が収率74%で、一方、反応温度130℃では、錯体2中のη^5-シクロオクタジエニル配位子が脱水素渡環したη^5-ペンタレニル配位子を有する新規フェノラート錯体(3,Ru(η^5-C_8H_9)(η^5-C_6H_5O))が収率76%で得られることを見出した。錯体2、3の構造を単結晶X線構造解析により詳細に検討した結果、錯体2および3中のフェノラート配位子は、η^5-オキソシクロヘキサジエニル配位子とみなした方が適切であり、この構造はIR、^<13>C NMR、ならびにDFT計算からも支持された。これらの新規ルテニウム錯体は、フェノール類の活性化を経る末端アルケンへの反マルコヴニコフ型不加反応の新触媒となる可能性を有している。さらに、錯体1を出発原料とし、我々がこれまでに独自の方法で合成した一連の環境調和型新規低原子価ルテニウム錯体の合成法、構造、および反応性について総説としてまとめて報告した。
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Research Products
(7 results)