2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15350079
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大熊 毅 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50201968)
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Keywords | BINAP / DPEN / 1,4-ジアミン / 反応機構 / 不斉水素化 / 立体選択性 / ルテニウム錯体触媒 / 1-テトラロン |
Research Abstract |
有機合成における触媒とは、「化学量論的変化に現れずに化学反応を促進する物質」を指す。優れた触媒は同じ反応促進作用を何十万回も繰り返すことができる。しかし、そのような高活性触媒はわずかに知られているだけである。この事実は触媒に高い活性を賦与する科学的原理が不足していることを意味する。本研究者の開発した光学活性ジホスフィン、2,2'-ジフェニルホスフィノ-1,1'-ビナフチル(BINAP)と1,2-ジフェニルエチレンジアミン(DPEN)を配位子とするルテニウム錯体触媒は単純ケトン類の水素化に対して極めて高い活性と立体選択性を示す。この触媒反応の機構を明らかにすることはこれまで知られていなかった一つの原理を導くことになり、化学の発展に大きく貢献するものと考え検討を行い、所期の目的を達成した。本触媒の高活性を生み出す重要な要因の一つにDPENがNH_2部をもつことがあげられる。これにより反応活性種はH^<δ->-Ru^<δ+>-N^<δ->-H^<δ+>の1,4-双極子をもつことになり、これがケトン基質の1,2-双極子(C^<δ+>=O^<δ->)と相互作用し、ペリ環状型の六員環遷移状態を経て速やかに水素化が進行する。従来の触媒と異なり、基質が中心金属と直接相互作用することのない外圏で反応する。BINAPとDPENにより形成される不斉環境は外圏の反応を効果的に制御し、高い光学収率で生成物を与える。 本触媒は多様な構造をもつケトン類の不斉水素化に適用できるが、1-テトラロンに代表される環状芳香族ケトン類の水素化に対しては高い活性と立体選択性を示さない。この原因を上記の反応機構に照らし合わせて考察した結果、縮環構造をもつテトラロンはBINAPとDPENによる反応場に適合しないことがわかった。剛直な縮環構造をもつテトラロンに対しては、基質の構造に対して柔軟に適応できる光学活性1,4-ジアミン配位子が有効であると推測し検討を行った結果、1-テトラロン類を最高99%の光学収率で水素化することに成功した。
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Research Products
(12 results)