2004 Fiscal Year Annual Research Report
フォトクロミック分子の電子機能変化を用いた有機半導体メモリ
Project/Area Number |
15350111
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
辻岡 強 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30346225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 敬太 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (60207165)
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Keywords | フォトクロミック / メモリ / 有機半導体 / 電子機能 / キャリア / ポリマー / 蒸着メタル選択性 / 異性化 |
Research Abstract |
フォトクロミック・ジアリールエテンは、光反応に伴って変化する両異性体が熱安定性を有し、高い耐久性を有する分子であり、次世代の情報記憶材料として期待されている。従来は光反応を用いたフォトンモード光メモリ材料として検討されてきたが、今回新たに有機半導体メモリへの応用を目的として、ジアリールエテン膜に対して電極からのキャリア注入による分子の励起による異性化反応を用いた分子メモリとしての研究を行った。 特に蒸着ジアリールエテン薄膜へのキャリア注入による異性化反応に関しては前年度に原理実証を行ったので、今年度は新たに光照射によるメモリ素子の消去のセル選択性(ランダムアクセス消去)を確保するために、電界印加による光異性化反応感度制御を試みた。さらに、ユビキタスコンピューティング分野で使用可能な超低コスト有機メモリの実現を目指し、ウェットプロセスで製造可能なポリマー系半導体メモリの基礎物性解明を目的として、フォトクロミック分子ドープポリマーへのキャリア注入特性を調べた。 電界印加による光異性化感度制御については、ジアリールエテン膜の着色状態膜に対して種々の波長の光照射を行い外部に取り出される光電流を調べた。外部光電流は光励起状態分子からLUMOレベルの電子、HOMOレベルのホールが移動し、有機膜から電極を通じて取り出されたことを示しているので、励起状態からの異性化反応が強制的に抑えられて基底状態に戻されることを意味している。実験結果によれば光の波長が短いほどこの外部キャリア生成効率は高く、約1V/nm程度の電界で数十%程度の効率が得られることが判明した。これはこの電界強度では光異性化反応の量子収率が大幅に制御できる可能性を示していることになる。 フォトクロミックポリマーへのキャリア注入実験の結果によれば、蒸着薄膜と同様にドープされたジアリールエテンが閉環体の時に高いキャリア注入特性を示すことがわかった。膜中でのホール伝導に関しては、蒸着膜では閉環体でポテンシャルバリアが低くなることがホール伝導が向上する原因となっていたが、フォトクロミックポリマーの場合は同じモデルでは説明が困難で、今後さらに調査・研究を行っていく必要がある。 尚、本研究を遂行中に偶然、特定のジアリールエテンにおける異性化状態に依存した特異な蒸着メタル選択機能を発見した。これは有機メモリの微細な電極形成に応用可能であり、当該分野に大きな影響を与える技術になるであろう。
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Research Products
(6 results)