2005 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー加熱連続延伸による繊維構造形成のX線マイクロビームによる直接観察
Project/Area Number |
15350135
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
浦川 宏 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (10183211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 完爾 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (10133133)
安永 秀計 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助手 (80241298)
奈倉 正宣 信州大学, 繊維学部, 教授 (70021178)
大越 豊 信州大学, 繊維学部, 助教授 (40185236)
後藤 康夫 信州大学, 繊維学部, 助手 (60262698)
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Keywords | 繊維構造形成過程 / レーザー加熱延伸 / 広角X線回折 / 小角X線散乱 / シシカバブモデル / On line測定 / ポリエチレンテレフタレート / 結晶化 |
Research Abstract |
高強度・高弾性率繊維の開発の基礎として、いわゆる繊維構造の形成過程の詳細を解明することが本研究の目的である。具体的には、未延伸PET糸のレーザー加熱連続延伸過程における内部構造変化をX線広角回折法(WAXD)及び小角散乱法(SAXS)で直接観察し、繊維構造形成過程を明らかにしようとするものである。今年度は大型放射光利用実験施設SPring8を利用することで、より短時間でかつ効率よくX線回折像を測定することに成功した。このとき、延伸点の位置変動を±0.3mmに抑えることができ、これは繊維構造形成過程を0.4ミリ秒以下の短い時間分解能で観察できたことに相当する。この分解能は、これまでの連続延伸過程のその場観察に関する研究で得られた分解能を凌駕している。測定されたX線回折像の時間発展で特徴的であるのは、子午線上の回折角5.4°に現れる(001')反射と赤道上のPET結晶からの回折ピークである。(001')反射は延伸点直後(0.5ミリ秒後)から明瞭に観察されるのに対して、結晶回折ピークは数ミリ秒後から現れる。この(001')反射の強度は、時間の経過とともに大きくなるが結晶回折ピークが明瞭になると消失してしまう。(001')反射がPET分子鎖の伸びきり鎖構造に由来するので、このX線回折像の変化は、まず繊維内部に伸びきり鎖が形成され、次の過程でそれらが結晶構造の配置をとること示している。(001')反射の消失は結晶構造の消滅則で説明できる。繊維構造をシシカバブモデルで説明すれば、ここで観察された伸びきり鎖がシシの部分を形成するものと考えられる。(001')反射の強度は高延伸倍率ほど大きくなることが観測され、延伸倍率でシシ構造の量が変化することが明らかになった。
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